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2023.01.28

神戸で絶景神社を求めて【後編】タクシー作戦で「高取神社」のご来光を狙う

神戸で絶景神社を求めて【後編】タクシー作戦で「高取神社」のご来光を狙う

穏やかで水深のとれる海が、神戸に貿易をもたらし、取り囲む山々からの眺望が交易に訪れた外国人の心を掴みました。

その魅力は、神戸に暮らす日本人ももちろん気がついており、神聖な場所として神社が建っています。

海と山とが近い暮らしを営めるくらい、神戸の山は市街地に近く、絶景神社にも30分程度の軽登山で訪れることができます。

早起きをして臨む朝の山登り、それだけですがすがしく、清らかな気持ちになります。

この連載の前編で書いたように、保久良神社ですばらしい体験ができました。

しかし、人は欲深いもの。

更なる絶景を求め、最も美しい時間に訪れてみたいと思ったのです。

そう、それは日の出の時間。

わたしは登山が趣味ではありません。また、体力に自信があるともいいがたいです。

だから、いけるところまでタクシーを使うことにしました。

【文】 コヤナギユウ (デザイナー/エディター)
給食のオバサンから書籍出版社で営業職ののち、渋谷やNYの路上で絵を売るイラストレーターへ。現在はグラフィックデザイナーに転身し、旅や体験を楽しく情緒的に表現するライター業も行い、写真も撮る。カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務め、神社検定3級。
公式HP /Twitter /Facebook /Instagram

予約しておいたタクシーで、まずは飛龍寺を目指す

高取神社がある高取山は神戸の西側、長田区と須磨区にまたがる標高328メートルの低山です。

頂上にあるのが高取神社で、バスで行ける登拝口は山の気配を感じさせない住宅地。

ここが本当に参道なのかとおどろきます。

本来ここから、30分程度の軽登山で頂上を目指しますが、今回はご来光を望みたいので作戦を練ることにしました。

日の出前の真っ暗な山道を歩くのは心配です。

それに日々の運動不足がたたって疲れ果ててしまい、せっかくの絶景をカメラに納める気力をなくすかも知れません。

高取神社のウェブサイトでアクセスを確認してみると、「飛龍寺より、徒歩約8分」と書いてあります。

つまり、車であれば、8分程度歩けば絶景にたどり着けるということ?

さっそく地元のタクシー会社に電話して、配車の予約をしました。

場所は宿泊しているゲストハウス萬家の前、時間は5時です。

ゲストハウス萬家は灘区にあり、高取山からは遠いですが、神戸のまち自体がコンパクトなので高速道路を使って30分程度で到着しました。

5時頃に閉鎖用のチェーンが外される飛龍寺を、車で上がれるところまで上がります。

タクシーの運転手さんは高取神社を知っていても、飛龍寺からいける道は初耳だそうで、いろいろ話を聞いてくれました。

今日の日の出は6時。

日の出という待ってくれないタイムリミットがありますが、焦りは禁物。

道にたっぷり迷ってもいいように、8分の所要時間に30分用意しました。

広い駐車場に着くと、それより上に向かう坂には「関係車両以外通行禁止」の看板が。

車で行けるのはここまでのようです。

親切な運転手さんに別れを告げ、バッグからヘッドライトを取り出します。

たった8分程度の登山になるはずなので、iPhoneのライト機能を使ってもよかったのですが、何かあったときのために少しでもバッテリーを使いたくなかったのです。

タクシーが去ったあと、夜明け前の暗闇が静かに広がっていました。

幸い、暗闇や静寂は好きな方なので、すんとした空気に冒険心がうずきます。

ヘッドライトで足元を照らしつつ、暗闇に目が慣れるようなるべく遠くに目をこらします。

猪や鹿に出くわさないか、耳を澄まし歩いていると、木々の間から時折キラキラと街明かりの瞬きが見えました。

それまで、山道というよりふつうの道路を歩いてきましたが、どうやらここが入り口のようです。

「夢想庵」という霊園区画の入り口向かって左手に、フェンス沿いに続いた細い歩道があります。

そこを進んで霊園を回り込むと、山道につながりました。

そこから5分ほど歩くと、高取神社参道にある月見茶屋脇に出ました。

よかった。暗いうちに神社へ行けそうです。

まずは本殿にご挨拶! 高取神社で日の出を待つ

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「神戸らしい眺望景観10選」を示す縫い針をモチーフにしたモニュメントがある

まだ暗くてあたりがよく見えませんが、まずは参拝を。

当たり前のことで忘れてしまいがちですが、神社は神域です。

どのような信仰を持った人であっても、誰かが大切に想っている場所やものをぞんざいにしてはいけないように、神社へ来たら敬いの気持ちを持ってお参りをしましょう。

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少しずつ明るくなってきた

実はわたし、神社検定3級なるものを持っています。

信心深い方ではないのですが、神道の基本を知っておくと、旅先での理解が深まりますし、海外で日本を説明するときにも便利なんです。

どこの国でも神話は突拍子もなくておもしろいですしね。

神社のお参りのしかたくらいは、覚えておきたいところ。

知ってると、なんか粋じゃないですか?

鳥居は神域への門で神聖な場所を表し、しめ縄が巡らされている場所は清浄な場所を意味しています。

本殿に着いたら帽子を脱ぎましょう。

礼拝の基本は「2拝2拍手1拝」。

礼拝は神様へのご挨拶。

一方的なお願い事をするのではなくて、お礼を伝えたり、自分が大事にしたい信念や誓いを宣言すると気持ちがいいです。

最初に住所と名前をいうと、気持ちが届きやすいといわれています。

でも、ついつい、お願いしてしまいますよね。

「どうか、ご来光が見られますように……!」

祈りが済んだら、手を下げて、最初と同じ深い礼を1回行い終了です。

神社の歴史によって礼拝方法には多少の違いがありますが、基本を覚えておけば、動作の理由が分かり、より気持ちよく神社を訪れることができますよ。

本殿以外の小さなお社も、本殿の神様やその土地にゆかりのある大事な神様に通じています。

きちんとご挨拶しにいきましょう!

神戸のまちが一望できる絶景の奥の宮・金高神社

高取神社の本殿に祀られているのは天つ神の武甕槌尊(たけみかづちのみこと)と豊受姫命(とようけひめのみこと)ですが、奥宮や末社などを合わせ、300余りの神様が祀られています。

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神功皇后(じんぐうこうごう)が武甕槌尊を祀った高取神社の由来地

特に奥の宮・金高神社は絶景です。

本殿御祭神である豊受姫命がもともと祀られていた由緒地です。

ここから、朝日が昇るのを待たせてもらうことにしました。

それにしても、暗いうちからたくさんの人が参拝に来ています。

ご年配から若い人まで、男女比は半々くらいでしょうか。

トレーニングウエアに身を包んだ人もいれば、ふだん通りの軽装や、愛犬を抱いた人まで登ってきました。

すれ違う人はみな、「おはようございます」と挨拶をします。

山ではすれ違うときに挨拶するのが礼儀で、一説には挨拶をすることでお互いを覚え、遭難時の目撃者になってもらうためとも。

ここは参道であり、登山道なのです。

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六甲の山々を繋ぐ縦走路にもなっている。トレイルランが流行っているが、境内では走らないこと

時計は6時を回りました。あたりはだいぶ明るくなり、そろそろ太陽が見えてもいいころです。

大きなカメラを抱えて、じっと東を眺めているわたしに、参拝者の方たちが声を掛けてくれます。

「朝日が見えるといいねぇ。ほんとうにきれいなんだよ」と。

頭上は晴天。でも、水平線には分厚い雲が確認できます。

残念ながら、今日は水平線から昇る朝日は見られそうもないようです。

「今日は残念だったね」と、朝日を待っていたみなさんが下山していきました。

天候はどうしようもありません。

それに、また登ればいいだけの話です。朝日を望む感動を味わうのが、少し先になっただけ。

なんてたって、ここに高取神社がある限り、太陽は毎日昇っているんですから。

明るくなってきたので、境内のお社や狛犬などを、もう少し撮影しておくことにしました。

本殿隣の石碑や、高取山頂上など、上へ下へいきながら、名残惜しくて写真を撮っていました。

そのときです。

横顔にあたたかさを感じて海を見ると、雲の切れ間から太陽が覗き、神戸港にはしごをかけています。

太陽が出てくると、画面の中の色数がグッと増えました。もう一度、金高神社でカメラを構えます。

〝カシャ〟

今回はこの1枚で満足です。

さあ、徒歩8分じゃない方の参道を下って帰りましょう。

Information 高取神社
住所 神戸市長田区高取山町103-7
電話番号 078-611-5925

参道の茶屋でモーニング

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4つある茶屋のうち、高取神社に一番近い月見茶屋は餃子が有名。早朝でなければ一杯やりに来るのも楽しそうだ

参道にはいくつもの古い神社と4軒の茶屋がありました。

茶屋は喫茶店やレストランというよりも、なんだか親戚の家のような雰囲気を漂わせています。

一番下にある清水茶屋で、朝ごはんをいただきました。

シンプルなトーストとコーヒーですが、さすがは神戸、食パンがやたらとおいしかったです。

山に寄り添う神戸の暮らし

神戸には、明治時代から「毎日登山」という習慣があるそうです。

トレーニングのようなハードなものでなく、身近な低山を健康目的で毎日登るもので、外国人が始めたものが市民に広まったといいます。

この高取山はその草分け的存在で、地元の人からは親しみを込めて「たかとりさん」と呼ばれているそうです。

神戸出身の友だちが、東京に暮らした一番の違和感に「山が見えないから、自分の向いている方角が分からない」といっていて、なぜ方角が知りたいのだろう、と不思議に思いました。

でも知りたいのは方角ではなく、きっと山の存在なのです。

一緒にご来光を待ったあのご婦人たちにとって、これが「神戸のふつう」。

暮らしの中の風景としてだけでなく、毎朝登る習慣としての山がある暮らしがここにあります。

それが当たり前になじんだら、山が見えないと不安に思う気持ちが少しだけ理解できました。

神戸で絶景神社を求めて【前編】は こちら

神戸で絶景神社を求めて【中編】は こちら

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