「神戸の野球カステラを守りたい」繋がれていく神戸市職員・志方功一さんの想い
これまで神戸でたくさんのお店を取材してきた筆者。
皆さんのお話を聞くたびに思っていたことがありました。
神戸の皆さんは、本当に地元への愛が強いなぁと。
神戸に昔からあるもの、受け継がれてきた文化や美味しいもの、変わらない味。
「この地で生まれたものをずっと守りたいから」という想いでお店を営んでいたり、広報活動をされていたりする方がとても多い印象があります。
今回お話を伺ったのは、神戸市職員の志方功一さん。
志方さんは『野球カステラプロジェクト(野球カステラ愛好会)』を立ち上げ、大正時代から神戸にある野球カステラを次の世代にも繋げていくために日々活動をしています。
私たちは、素朴でユーモラスなお菓子「野球カステラ」の歴史を紐解き、その魅力を広く知ってもらう活動をしています。
今、野球カステラを製造販売するお店は、後継ぎ不足により数を減らしています。
様々な視点でこの伝統産業・文化に関わり、情報発信することで、次世代の職人さんが現れることを願っています。
-野球カステラプロジェクト公式サイトより引用- |
前回の記事では、今でも野球カステラを製造、販売している瓦煎餅屋さんを実際に巡り、各お店の特徴を紹介しています。
今回の記事では、志方さんに野球カステラの魅力、活動を続ける思いについて語っていただきました。
【取材・文】ほしゆき
ウェブメディア『TABI LABO』の編集部に所属した後、2018年に独立してフリーライターへ。人やモノ・コトの背景にあるストーリーが好きで、インタビューを中心に企画・執筆を行っている。コピーライターとしてアパレルブランドのコンセプト制作、SHE likesでライティングの講師を務めるなど、幅広く活動中。
野球カステラには、100年以上の歴史がある
志方さんが野球カステラにハマったのは、大人になってから。
仕事で地元産業の活性化に携わることになり、最初に目をつけたのは『瓦煎餅』のお店でした。
野球カステラを焼いているのは洋菓子店ではなく、神戸の瓦煎餅屋さんです。
地元のお店をまわっている際に、複数のお店で野球カステラが販売されていることに気づき、小麦粉と卵のずっと変わらない素朴で優しい味と、小さいのに当時の野球道具を忠実に再現しているコロンとしたフォルムの可愛さに惹かれ、虜になったそうです。
調べてみると、野球カステラは神戸発祥でお店が神戸に集結していることが発覚。
大正10年には野球カステラが存在していたことがわかりました。
そして、昭和前期に80店舗ほどあった瓦煎餅屋さんも今残っているのは1割ほど。
野球カステラを焼いているお店となると、さらに減少してしまいます。
多くの職人さんから「もう自分の代で店を閉めるつもりだ」という言葉を聞き、店の外から見える場所で職人さんがカステラを焼いている、神戸の日常の景色がなくなってしまうことにとても寂しさを覚えたそうです。
野球カステラを、ここで絶えさせたくはない。
何かできることはないのかと奮起し、志方さんは『野球カステラプロジェクト(野球カステラ愛好会)』の立ち上げに至りました。
奥が深い野球カステラのフォルム