2023.07.26
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神戸の名物僧侶や神事が面白いってホント?
神戸には沢山の寺社仏閣があり、多くの参拝客で賑わっています。お参りだけでなく「#御朱印」集めや、「#寺社仏閣」、「#パワースポット」というハッシュタグが大人気。
でも、お寺や神社で手を合わせて、そのまま帰ってしまってはもったいない!
というのも、神戸では法話日本一になった話上手なお坊さんや、神社の祭りや神事に寄与する神社の氏子さんが活躍しているので、今回ご紹介します。
寺社仏閣巡りが、もっと楽しくなるヒントになるでしょう。
神戸出身ライター。地元目線で企画・取材・執筆と撮影を担当。経営者インタビューや、寺社仏閣・食・ローカルネタが得意分野、取材件数は500件を超える。最近では広報・コンサル支援にも携わっている。
須磨寺 副住職 / 小池陽人さん
お坊さんの法話は眠たい……、なんて思ったことありせんか?
神戸には、日本一の法話上手を決定する「H1法話グランプリ」で2018年に優勝を手にしたお坊さんがいます。
神戸市須磨区にある真言宗須磨寺の副住職・小池陽人さん。法話会には、近隣からだけではなく、新幹線で話を聞きにくる人気っぷり、4歳から90歳まで幅広いファン層を持つお坊さんです。
「法話を始めたのは、仏教の教えに出会って救われたことがきっかけでした。お釈迦様の教えに触れて、すごく楽になった」。
人生を豊かに、楽しく生きられることを伝えたいと思ったことが発端だったと言います。
小池さんは、東京のニュータウン出身で、育った団地は土地開発された地域、仏壇がある家は1軒もなく、寺社もお地蔵さんも無いことが普通の街で育ちます。
神仏に手を合わせるという習慣や信仰の対象がない場所でしたが、縁あって母方祖父の跡を継ぎ僧侶になりました。
地元の同世代(20代・30代)の友達にどう伝えたらいいか考えた時、昔みたいに葬儀や法事に親族が集まることも減って死が遠い存在になり、お寺で待っているだけでは、誰も来てくれません。
そこで、2017年6月からYouTubeで、法話やLive配信を始め、登録者は約5.5万人になりました。
「今苦しい人生を生きている若い世代にも仏教を伝えたい。YouTubeで関連動画として表示され見てくださる方もいるかもと思った」と、言います。
小池さんの法話は、笑顔で優しく、わかりやすい言葉で友達と話しているかのように親身に語ります。
「自分は未熟なので、等身大で話すということを意識します。お坊さんは、立派でなければいけないと思うと、気負ってしまうので、胃の底から体得したことだけを同じ目線もしくは下から語るようにしています」。
自身の失敗談で大笑いしたかと思えば、涙が頬を伝うエピソードなど、話の中に喜怒哀楽がありどんどん引き込まれていく、そして人生を生きる上で、ほっとする、楽になるヒントが入っていることが人気の秘密なのかもしれません。
人生に余白の時間を
現代人はとにかく多忙な毎日を過ごしています。
「ファーストプレイスの自宅では立派な親、セカンドプレイスの職場では頼られる上司・部下として、その二つだけになると、余白がなくなってしんどくなってしまう。サードプレイスとして寺社参りで、余白があるように、生活の一部として、目に見えないものに、感謝するのは、すごく豊かな時間になる。そこに意味を求めずに、ただ参るだけでいい」と語ります。
誰でも気軽に参加できる須磨寺の法話会
須磨寺では、誰でも法話会に無料で参加できます。コロナ前は、公開収録に300人集まっていたという人気の法話会が以下で開催されます。
【毎月の法話会】
・18日 10:00〜護摩祈祷の後に法話
・20日 11:30〜奥の院
・21日 11:30〜奥の院と、14:00〜護摩祈祷後に法話
・春と秋のお彼岸期間中に毎日法話
H1グランプリが2023年12月に開催!
前述のH1が2年ぶりに、「H1法話グランプリ2023」として2023年12月2日(土)に、なら100年会館で開催されます。
2019年に開催したH1グランプリのチケットは、インターネット販売された200枚が開始10分で完売し、キャンセル待ちが1600人、対面販売用の1500円チケットを買い求めに愛知県から買いに来た方もいたんだそう。
ライブ配信には、1,000人以上がリアルで視聴、動画は10万回再生を超えているヒットコンテンツとなりました。
須磨寺には、御朱印や、源平合戦の史跡、「サヨナラおじさん」淀川長治の墓がありますが、ちょっと立ち止まって気軽に法話を聞いてみるのも楽しいかもしれませんね。
「須磨寺は、お子さんが喜ぶようなオモロイものがいっぱいありますが、自宅近くの寺社に通うような習慣で心に余裕ができれば」と、小池さんは、優しい笑顔で語りました。
住所 | 神戸市須磨区須磨寺町4丁目6-8 |
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アクセス | 山陽電鉄須磨寺駅より徒歩6分 |
電話番号 | 078-731-0416 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.sumadera.or.jp/ |
https://www.instagram.com/sumaderakoike/ |
長田神社「古式追儺式」 (県指定重要無形民俗文化財)の鬼役は誰?
お祭りや縁日と聞くと、ワクワクして屋台で買い物した楽しい記憶が蘇ります。
神戸市長田区にある「長田神社」では毎年2月3日に、「古式追儺式」(ついなしき)の節分行事を行います。
境内は、多くの参拝者で埋め尽くされ、長田区民にとって大事な神事。節分といえば豆を撒いて鬼退治が通説ですが、長田神社の鬼は神の使いなので、鬼に豆を撒きません。
長田神社の追儺式で奉仕する鬼は、長田大神の代理の化身で、神に代わって「お祓いの神事」を行う姿が鬼の踊りと云われています。
室町時代から続く神事として、1970年には兵庫県の重要無形文化財にも指定されました。
夕暮れの薄暗い空の下で、神の使いである鬼が炎燃え上がる松明を片手に舞う姿は、圧巻で参拝者を魅了します。2月の寒空で参拝する人は底冷えする中、じっと見守りますが、鬼は裸足。
そして、追儺式で演舞する鬼は、当日朝早くに須磨海岸の冷たい海で、禊(みそぎ)で身を清めて神事に取り組んでいます。
鬼役はきっと長田神社の神主さん達だろうと思っていましたが、実は長田神社の氏子さん達でした。氏子とは地域の氏神におまつりをする人達で、お祭りの重要な担い手です。
鬼を舞う中の人に聞いてみました
そんな長田神社の重要無形民俗文化財の神事を司る氏子達の中で、鬼を何度も舞っているベテランの児玉剛和さんに、鬼の魅力について、お話を伺ってみました。
初舞台は二十歳の時、長田神社の氏子として親戚が鬼役を奉仕していたこともあり、いつしか憧れを抱くようになりました。格式の高い行事のため誰でもなれるわけではなく、とても狭き門だったようです。
追儺式は、室町時代からの伝統をそのままに引き継いでいるため、禊もかなりハード。
前日2月2日から神社の鬼宿(おにのやど)に籠り、演舞の練習の合間に井戸水33杯を5セット浴び、当日3日の早朝に須磨の海中にふんどし姿で入り、身も心も清めて神の代理として鬼役を務めます。
そこまでする覚悟がなければ鬼にはなれない、想像以上にハードルが高い儀式でした。
神事は、一番太郎鬼、赤鬼、青鬼、姥鬼(うばおに)、呆助鬼(ほおすけおに)、大役鬼といわれる餅割鬼(もちわりおに)、尻くじり鬼(しりくじりおに)の七匹の鬼が舞います。
「鬼の魅力は、年に一度一市民である私が神様の代わりとして、ご奉仕させていただき長田の地域のお役に立てること。鬼は神聖なもので、地域の方々が手を合わせてくださる。身が引き締まると共に、地域に貢献できることが醍醐味で、家族にとっても名誉なこと」と言います。
ハイライトは、最後の餅割行事。大役の餅割鬼と尻くじり鬼が12ヶ月分の餅を斧で割り新年を祓い清めるところです。鬼達が松明の炎で災いを焼き尽くし、一年間の人々の無病息災、家内安全を祈り願って喜び祝う行事です。
時間的には、午後5時〜6時ごろ、2月の空は薄暗く、松明が明るく、幻想的な雰囲気となります。
そんな大変な行事に毎年奉仕する児玉さんは、「理屈抜きで、鬼が好き。井戸水も浴びるし、真冬の海にも入る。それでも鬼が好きだからやる」と語ります。
神事の追儺式は、長田神社と氏子の強い繋がりの下で何百年もの間、氏子から氏子へと脈々と受け継がれてきました。
毎年、2月3日は、長田の人たちがとてもワクワクする日、ちょっと裏側のことを知ることでとても興味が持てました。
境内では、鬼が手に舞った松明や厄除け餅、鬼が描かれた追儺式絵馬、当日だけ授与される追儺式御朱印もありますので、興味のある方は、訪ねてみてください。
住所 | 神戸市長田区長田町3丁目1-1 |
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アクセス | 神戸高速鉄道 高速長田駅・神戸市営地下鉄長田駅より徒歩5分 |
電話番号 | 078-691-0333 |
営業時間 | 開閉門 4月~9月 5:00~18:00 / 10月~3月 6:00~18:00 授与所 9:00~16:00 |
定休日 | なし |
料金 | 入場無料 |
公式サイト | https://nagatajinja.jp/ |
古式追儺式 | 毎年2月3日 |