COLUMN

2021.07.26

「静香園」こだわりのお茶を育てる神戸唯一の茶園

「静香園」こだわりのお茶を育てる神戸唯一の茶園

ご存知でしたか、六甲山系・摩耶山の登山道の途中に神戸市で唯一の茶園があることを。無農薬有機栽培で育てられたその年最初の新芽でつくるこだわりの新茶は、根強いファンが多くすぐになくなります。茶園では緑鮮やかな茶畑を眺めながら東屋のテーブルでお茶やおまんじゅうがいただけます。ここ2年はコロナ禍で中止していますが、例年5月には新芽の茶摘み体験もできるのです。新茶の季節、ハイキングをかねて訪ねてみてはどうでしょう。

観光茶園 静香園(しずかえん)

阪急王子公園駅を出て北に坂を約15分上がると摩耶山に通じる青谷道登山口です。ここから森の中を10分余り登ると左手が開け、茶畑が見えてきます。観光茶園「静香(しずか)園」(神戸市灘区原田)です。経営する前(すすめ)裕二社長(65)によると、茶畑の広さは5千平方メートル足らず。日本でポピュラーな「やぶきた」という品種を約5千本栽培しています。訪ねた6月初旬は新茶の摘み取りがほぼ終わったところでした。

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登山道を上がると、左手に見えてくる茶畑

実は神戸では、明治初頭から同30年ごろまで現在の灘区原田通や中央区割塚通一帯で盛んに茶が栽培され、神戸港の重要な輸出品の一つとなっていました。他国との競争や都市開発でいったんは途絶えましたが、「歴史ある神戸の茶を再び」と思い立ったのが、割塚通の大日商店街で茶の小売店の静香園を営んでいた前さんの亡父・久裕さんでした。前さん父子は登山道脇の荒れ地を切り開き、茶畑としました。1976年のことです。約100年ぶりの「神戸のお茶」の復活でした。

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明治時代の神戸の製茶工場。旧居留地にあったという

「ここは茶の栽培に適した所なのです」と前さんは言います。開けていて日が当たり、砂地の土壌は水はけがいい。六甲から風が吹き下ろすことで、霜もつきにくい。周辺に果樹など農作物が少ないため虫もあまりいないので、無農薬栽培にも好都合。化学肥料も使わず、鶏糞や油かす、腐葉土で育てます。 「安全安心なお茶を提供したい」との思いからです。さらに前さんのこだわりは、その年最初の新芽の一番茶(新茶)だけをつくって、二番茶、三番茶などは摘まないことです。茶葉は煎茶に加工されます。「秋から冬にかけて栄養をじっくり蓄えた新芽は、まろやかで香りの高いお茶になります。それがうちの自慢です」

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静香園の茶畑の全景。左に東屋が見える

静香園の茶葉を使った「自然新茶」(100グラム税込み1300円)は、茶園や静香園の店舗などで買えますが、生産量は限られます。このため年間を通じてのお勧めは、「静香かりがね」(100グラム税込み600円、200グラム同1190円)だということです。雁が音とは、茶葉の茎や葉脈をブレンドしてつくるお茶です。滋賀県産の茶葉を滋賀で製茶していますが、微妙な製法やブレンドは静香園の完全オリジナルで、味、香り、いれた際の色など前さんが納得できるものしか扱っていません。

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茶畑に立つ前裕二さん

茶園では、いずれも抹茶を練り込んだ玉露あめがついた「お茶セット」(税込み300円)や「抹茶ラテ」「ほうじ茶ラテ」(同350円)などのメニューがありますが、一番人気という「おまんじゅうセット」(同600円)をいただきました。抹茶を使った緑色のお茶まんじゅう2個と玉露あめ、それになぜか奄美の「さんご豆」がついています。お茶は静香かりがねです。いい香りがしてさわやかな飲み口でした。おまんじゅうは温めてあって食べやすい。さんご豆は奄美ならぬ甘みのアクセントで、あめは、ほのかにお茶の甘さを感じます。何度もお茶のおかわりをしました。

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静香園で一番人気の「おまんじゅうセット」

ほうじ茶やまんじゅう、あめ、抹茶ラテなども販売しています。神戸産の茶葉のお茶も味わってみたくて、自然新茶を買い求め、自宅で試しました。湯飲みでお湯をさましてから急須に入れるのがポイントです。色は緑の静香かりがねと違い、ヤマブキ色でした。やぶきた本来の色だそうです。味はまろやかでとても上品でした。

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静香園の茶葉を使った「自然新茶」

茶摘みが体験できることも静香園の楽しみです。昨年と今年は中止しましたが、例年だと5月、土日をはじめ週4日ほど、かすりの着物と豆絞りの手ぬぐい姿で茶摘みを楽しめます(有料)。前さんは電子レンジやホットプレートを使い蒸した茶葉を揉み込んで加工する「手もみ」の実演もしてみせます。リピーターも多いそうで、来年こそは再開できるといいですね。

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静香園の入り口の前さん

さて最近、「神戸のお茶」をめぐって、新しい動きが注目されています。静香園の新茶を使ったリキュールができたのです。静香園、酒卸の神戸酒類販売、神戸ワイナリーを運営する神戸農政公社(旧神戸みのりの公社)の三者が提携して企画しました。神戸産ブドウによる公社のワインを蒸留したブランデーに茶葉を漬け込み、お茶の味や香りを溶け込ませグラニュー糖などを加えて仕上げました。アルコール度数は10度です。この「神戸静香園 お茶のお酒」は1本300ミリリットル、税込み1595円。限定560本を神戸ワイナリーの店舗や神戸阪急などで7月から販売しています。

茶葉から抽出した酒は珍しいそうで、前さんは「試作品を飲みましたが、緑がかった色をしていておいしかった。神戸にこだわった、新しい神戸の名物にしたい」と意気込んでいます。150年の歴史を持つ神戸のお茶。これからも目が離せません。

SHOP INFO

静香園
住所:茶園 神戸市灘区原田小屋場大原1-5 / 店舗 同市中央区割塚通6-2-19
TEL:078-222-0007
営業時間:茶園 土日祝の11:00~17:00 平日は予約のみ受け付け / 店舗 10:00~18:00
定休日:日曜定休

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