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2023.05.23

神戸文学散歩~文学ゆかりのスポットめぐり~

神戸文学散歩~文学ゆかりのスポットめぐり~

小説などの物語の中に、神戸の街が登場することがあります。

作家から見た神戸は、どんな風に映っていたのかを知ると、また違った角度から神戸の街を楽しむことができるかもしれません。

そこで今回は「神戸文学散歩」と称して、文学に関わりのあるスポットを紹介します。

神戸文学館

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まず紹介するのは、阪急電車 王子公園駅より徒歩8分ほどのところにある「神戸文学館」。

同館では、神戸にゆかりのある作家たちを紹介しています。

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館内の常設展示では、主に明治から昭和の戦後ごろまでの神戸ゆかりや、神戸を舞台にした作品を書いた作家の初版本や原稿、愛用品、スケッチなどを紹介。当時の神戸の街の様子を撮影した写真とともに解説しています。

なかには、神戸を代表する詩人の竹中郁、神戸で作品を書いていた随筆家の岡部伊都子の書斎の一部を再現したコーナーも設けています。

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展示物以外の注目ポイントは赤レンガ造りの建物です。

この建物は、1904年に関西学院のチャペルとして建てられたもので、イギリス人のM・ウィグノール氏が設計。アメリカの銀行家、ジョン・ブランチ氏の寄付によって建てられたため「ブランチ・メモリアル・チャペル」とも呼ばれています。

その後、1940年に神戸市が買収しましたが、1945年の神戸大空襲でチャペルの尖塔や屋根が焼け落ちるなどの被害を受けました。

以降、神戸市の図書館として活用されていた時期を経て、1993年にチャペルの外観を原状に復元し、神戸市立王子市民ギャラリーとしてオープン。2006年に、今の「神戸文学館」として再出発しました。

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このチャペルの復元作業では、古い写真をもとに明治37年に建築された当時の外観を再現しています。

外壁のレンガは、イギリス積みという方法を採用。壁の一部には焼夷弾の焼け跡が残るレンガも使用されており、2008年3月には国「登録有形文化財」の指定を受けました。

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特筆すべきは、「ハンマー・ビーム・トラス」とよばれる梁(はり)です。

梁は通常、柱と柱を連結するため水平に組まれることが多いのですが、神戸文学館は大きなアーチ状に組まれた梁で、屋根を支えているという珍しい構造となっています。

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窓ガラスに装飾されたぶどう文様の装飾も建築当時の仕様を再現

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神戸ゆかりの文豪や作家の本が読めるサロンコーナー

神戸文学館では定期的に企画展も開催されています。

文学イベント「土曜サロン」などのイベント情報は、ホームページで確認してみてくださいね。

Information神戸文学館
住所 神戸市灘区王子町3丁目1番2号
アクセス 阪急電車 王子公園駅より徒歩約8分、JR灘駅より徒歩約10分
電話番号 078-882-2028
入場料 無料
公式サイト https://www.kobe-np.co.jp/info/bungakukan/

「倚松庵」

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続いて紹介するのは、六甲ライナー魚崎駅から2分ほど歩いたところにある「倚松庵(いしょうあん)」。

作家の谷崎潤一郎が昭和11年11月から昭和18年11月までの7年間暮らしたという旧邸で、同氏の代表作『細雪(ささめゆき)』の舞台としても知られている施設です。

「倚松庵」という名前は、住んでいた当時に谷崎が使用していた号が由来。妻の松子と恋愛中に「松に寄りかかる」という意味でつけられました。

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石碑の文字は谷崎の妻・松子によって書かれたもの

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昔使われていた椅子も残っている

この家が建築されたのは、昭和4年のこと。

当時としては、とてもモダンな家で、借りるはずの家よりもこちらの家が気に入った谷崎は家主に借家に移ってもらい、この家を借りることにしたのだそう。

谷崎は作品のイメージが膨らむと、そのイメージに近い家に移り住んで、自分が作中人物になりきって小説を書いていたことで知られています。『細雪』に登場する次女の幸子の家は、作中では芦屋にある設定になっていますが、そのモデルとなった家がこちらの倚松庵なのです。

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2階のこちらの部屋は、「倚松庵」の中でも一番いい部屋で、夫婦の寝室として使われていました。

『細雪』の冒頭では「こいさん、頼むわ」という台詞から物語が始まるのですが、そこで描写されていたのが、こちらの部屋。

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小説の中では悦子の部屋として描かれていた「中の部屋」は、現在展示室として使用されています。

飾り棚の中には、本の装丁にもこだわっていたという谷崎の作品を展示。

また、壁面には家主の後藤さんと、家の立ち退きに関する手紙のやりとりが展示されています。

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2階の西の部屋は、『細雪』では妙子がミシンを置いて仕事部屋にしていましたが、実際は谷崎が書斎として使用していました。ところが、この部屋は西日が入って暑く、仕事ができなかったそうで、谷崎はその後、庭に離れを作ってそこで仕事をしていたのだとか。

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『細雪』の中でどのように描写されているかを紹介した木札

「倚松庵」は、昭和13年の阪神大水害、昭和20年の空襲、そして平成7年の阪神淡路大震災と3度の災禍を逃れた運の強い家ともいわれています。

阪神淡路大震災の際には、その数年前に移築するときに簡易な耐震構造にしていたため、瓦一枚おちず、ガラス一枚割れなかったという頑丈ぶりだったそう。

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1階の応接室にある本棚には、谷崎潤一郎の著書や参考文献が並んでいます。

本の貸し出しは行っていませんが、閲覧は自由。毎月第三土曜日には、専門家による解説が行われる説明会も実施しているので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

Information倚松庵
住所 神戸市東灘区住吉東町1丁目6番50号
アクセス 六甲ライナー魚崎駅より徒歩2分
電話番号 078-842-0730
公式サイト https://www.city.kobe.lg.jp/a31937/kanko/bunka/bunkashisetsu/ishoan/index.html
【取材・文】中田優里奈

神戸在住のライター。関西の観光、グルメを中心に企画・取材・執筆・撮影を担当。書籍『るるぶKids こどもの運動能力がぐんぐん伸びる公園 京阪神版』では、神戸市内13ヶ所の公園を取材。地元の魅力を発信したいという思いのもと、日頃から神戸の街を歩きネタ探しをしています。

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