2024.02.16
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神戸で唯一の醤油蔵「池本醤油」
私たちの暮らしに欠かせない調味料・お醤油。
ほうれん草のおひたし、大根や里芋の煮物、お造りはもちろんのこと魚の煮付けなど、さまざまな料理に使います。
そんなお醤油をつくる醤油蔵が神戸にもあるのをご存知ですか?
兵庫県内でお醤油と言えば、ヒガシマル醤油などがある、たつのが有名ですが、神戸にも一つだけ醤油蔵があります。
今回は、神戸唯一の醤油蔵「池本醤油」さんを訪ねました。
伝統の味を守り続ける「池本醤油」
神戸唯一の醤油蔵「池本醤油」は、神戸市西区にある約140年の歴史をもつ老舗です。
1885年に初代池本梅吉が明石郡福谷村に創業。その後、現所在地の神戸市西区に蔵を移転しました。
木造建築で建てられた醤油蔵は、今も伝統の味を継承し続けています。
現在、「池本醤油」を切り盛りするのは六代目の池本充宏さん。大学卒業後、大手スーパーに就職し、鮮魚売り場を担当。その後、家業を継がれました。
「配達に行ってたんです」とおっしゃるので詳しく伺うと、西区の個人宅に個配されているとのこと。
核家族化で、配達する件数、本数、頻度は減っているものの、現在でも800件近いお家にお醤油を配達されていると教えてくれました。
令和の時代にも、そういったスタイルが残っていることを知り、気持ちがほっこりと温かくなりました。
今回、特別に案内いただいた醤油蔵に一歩足を踏み入れると、お醤油のいい香りに体が包まれます。思わず「いい匂い」と呟くと、「私はもう鼻が慣れてしまって分からないですね」と池本さんは笑います。
天井の高い蔵の中には、醤油を火入する機械、発酵中の樽、お醤油を寝かしオリを沈ませる大樽などが並んでいます。
樽の横には井戸があり、「醤油作りに欠かせないのが、この水なんです」と池本さんがスイッチを入れると、とうとうと井戸水が流れ出します。
混ざり気のない澄んだ六甲山系の水が、「池本醤油」のまろやかな味を生み出している秘訣かも知れません。
バリエーション豊かなお醤油が楽しい!
六代目が受け継ぐ「池本醤油」の味は、約12種類。誰でも立ち寄ることができる醤油蔵併設の直売店には、フルラインナップが並びます。
看板商品の「かけしょうゆ」は、ちょっと甘くてまったりとした濃口醤油。料理に味わい深さが加わり、一度試せば癖になる、「池本醤油」いちおしのお醤油です。
他に、独特の旨味、風味が特徴のほんのり甘い濃口醤油「上撰濃口醤油」や旨味を多く含んだ「上撰淡口醤油」、徳島産のゆず果汁の風味豊かな「しょうゆ屋さんのぽん酢」などがあります。
さらには、神戸ならではのくぎ煮のためのお醤油や、アイスクリームにかけるお醤油といったユニークな商品も。
どれも深い味わい、コク、まろやかさなど、それぞれの旨味を実感できるものばかりです。
直売店には、一升瓶の他にお手軽サイズの100mlペットボトルの商品もあるので、気になったお醤油を気軽に購入できるのもうれしいです。
50年ぶりの新しいチャレンジ
「実は来週、搾りをする予定なんです」と語る池本さん。聞くと、昨年「池本醤油」で初めて「本醸造」のお醤油を仕込み、ちょうど筆者が取材にいった翌週に、搾りを予定しているとのこと。
「私の父の代では、混合という製法をメインにお醤油を作っていました。お醤油のもととなる生揚を協業工場から仕入れ、そこにアミノ酸液などを加えていき『池本醤油』オリジナルに仕上げます。そんな混合製法とは異なる、アミノ酸液を加えない本醸造の製法にチャレンジしてみたいと思って」。
「本醸造にチャレンジするからには、うちらしいお醤油を作ってみたい」そう思った池本さんは、隣町・池谷地区の後輩が育てる大豆、神出町のベーカリー「小麦生活」が育てる小麦など、地元の素材を使用した醤油づくりへの挑戦を決意しました。
近々、「池本醤油」初となる本醸造醤油が店内に並ぶのが楽しみです。
また、SDGsを意識した醤油づくりにも力を入れていくため、粒の小さな丹波黒豆を買い取ったそうです。本醸造のお醤油は小ロットで作ることができるので、個人オーダーも受ける予定です。使いたい素材で作る自分だけのお醤油ができるなんて、想像しただけで楽しそうです。
伝統を受け継ぎつつ新たな試みにも意欲的な池本さん。
毎日の食卓に並ぶ料理の味わいを引き立て、私たちの食生活を豊かにしてくれる、メイド・イン・神戸のお醤油、一度味わってみませんか。
醤油蔵は通常一般公開されていませんが、併設の直売店はどなたでも気軽に立ち寄ることができるので、ぜひ訪れてみてください。
住所 | 神戸市西区櫨谷町福谷691 |
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アクセス | 市バス「狩場台1丁目」徒歩約15分 |
営業時間(直売店) | 8:30〜17:30 ※定休日:日・祝日・第2土曜日 |
電話番号 | 078-991-0001 |
公式HP | https://www.kikumurasaki.co.jp/ |
赤穂生まれ、赤穂郡上郡育ち、神戸暮らし。人に出会うことが好きです。誰かの大切な思いを文章にして、たくさんの方に伝えるお手伝いをしたいと思っています。お菓子、パンなどを中心に雑誌、ウェブなどで取材執筆。イベント企画などにも携わっています。著書「東京最高のパティスリー」(ぴあ)、MOOK「神戸のおいしいパン屋さん」、「神戸紅茶さんぽ」、「神戸土産の新定番」、「神戸のパン屋さん、やっぱりすごい」(共にグラフィス社)を編集執筆。関西テレビ番組「よーいドン・本日のおすすめ3」にも不定期出演中。