COLUMN

2021.10.25

神戸市で唯一の国宝建造物の本堂/西区の太山寺と周辺の見どころ

神戸市で唯一の国宝建造物の本堂/西区の太山寺と周辺の見どころ

神戸市西区伊川谷町前開。周囲の山々の緑が美しいのどかな里に、奈良時代創建と伝わる三身山さんしんざん太山寺たいさんじがあります。天台宗の寺で、山号は東に望む三つの峰からなる山の名と同じです。神戸市で唯一の国宝の建物があることで知られます。鎌倉時代に再建された国宝・本堂は、幅21メートル、奥行き18メートルに及ぶ堂々たる建物です。他にも多くの文化財を有する寺の魅力と、周辺の見どころを紹介します。

阪神高速神戸線を経て第二神明道路の高丸インターから北へ

太山寺は阪神高速神戸線を経て第二神明道路の高丸インターから北へ10分余り。山麓バイパスを使うルートもあります。三宮から30~40分で行けるでしょう。地下鉄などの駅からバスも出ていますが本数は少ないので、宿泊先でレンタカーを借り、周辺にも足を伸ばすというのはいかがでしょう。

県道16号を進むと緑の「太山寺」という看板が見えてきます。南側に国の重要文化財・仁王門がありますから、その横から寺域に入ります。いくつかの塔頭(たっちゅう=小寺院)を見ながら白壁に挟まれた道を抜け、左に折れて石段を上ると太山寺・中門です。「播州太山寺の縁起」によると、大化の改新で知られる藤原鎌足の子の定恵が開山(創始者)で、鎌足の孫の藤原宇合(うまかい)が霊亀2(716)年に建立したとされます。

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太山寺の入り口、仁王門。移設時に現在の姿になった

中門前に立つと正面に国宝の本堂が見えます。朱塗りの柱に格子を組み込んだ蔀戸(しとみど)が鮮やかです。屋根は銅板葺きで緑がかっています。創建時の建物は火災で失われましたが、約700年前の1300年ごろに再建されました。日本風の和様を主に中国風の唐様も採り入れています。時代の特徴でしょうか。内部は仏像を安置する内陣と礼拝空間である外陣などからなります。そうした場所ごとに構造や天井のデザインを変えているのも見どころの一つだそうです。本尊は薬師如来で、厨子の中に収められています。前に安置された高さ1.5メートルほどの「お前立ち」の像からそのお姿を想像するしかありません。ご開帳もないので、まさしく秘仏ですね。

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正面から見た国宝・本堂。均整の取れた大規模な建物だ

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本堂の内部

他にぜひ見ておきたいのは、本堂左手にある阿弥陀堂(1688年再建)の阿弥陀如来坐像(国・重文)です。鎌倉初期の寄木造りの丈六仏(身長1丈6尺の仏)です。太山寺の坐像は高さ9尺(約270センチ)で、世界遺産・平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の阿弥陀像にも通じる優しいお顔に引き込まれました。本堂右手の三重塔(1688年建立・兵庫県指定文化財)も一見の価値ありです。境内入り口の国重文の仁王門(室町中期)も、行きか帰りに見学しましょう。いま上層部がない構造ですがかつては重層で、現在地から西に2キロ以上離れた地下鉄伊川谷駅のあたりにあったそうです。つまりそこまでが寺域だったわけで、南北朝時代には支院41坊を数えたという盛時がしのばれます。

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阿弥陀堂の阿弥陀如来坐像と辻󠄀井定宏住職

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阿弥陀如来坐像

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三重塔。初層内部に大日如来坐像などを安置する

催事では、1月7日の鬼たちが踊る追儺(ついな)式、5月8日の花まつり、同12日の練供養(来迎会)が有名で、大勢の人でにぎわいます。練供養は阿弥陀様と25の菩薩が我々衆生を浄土に導くため練り歩くもので、辻󠄀井定宏住職(74)によると、兵庫県下で来迎会を催しているのはいま太山寺だけだといいます。住職は「ここは静かで落ち着いたところです。お参りいただいて、仏様と会話し、自らを振り返ってもらいたいと思います」と話します。

太山時は「両界曼荼羅」など国の重文に指定された多くの絵画や経典や書物、武具も所蔵していますが、各地の博物館に寄託されており、ふだんは見ることができません。周辺の豊かな自然は11ヘクタールの「太山寺原生林」として、県の天然記念物となっています。紅葉も見事ですよ。寺のそばを流れる伊川の左岸の岩肌には、磨崖仏の不動明王が彫られています。像高は175センチで、鎌倉期の兵庫県最古の磨崖仏といいます。寺から歩いて5分ほど、市の案内板が目印です。

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近くの伊川左岸の岩肌に彫られた「太山寺磨崖不動明王」

帰り道の仁王門手前にあるコーヒー専門店「太山寺珈琲焙煎室」

拝観で歩き疲れたら格好の休憩場所があります。帰り道の仁王門手前にあるコーヒー専門店「太山寺珈琲焙煎室」です。コーヒー関連の「Qグレーダー」などの資格を持つ横野貢司さん(44)が、焙煎したてのコーヒーをいれてくれます(税込み350円)。店内にテーブルなどはないので、屋外の席に腰掛けるのがいいですね。様々な国や地域のコーヒー豆も売っています。門を出てすぐ左の16号沿いには、「太山寺温泉 なでしこの湯」という温泉施設があり、日帰り入浴ができます。

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太山寺珈琲焙煎室。こだわりのコーヒーが味わえる

太山寺から北に10分余の「神戸ワイナリー(農業公園)」

さらに車で足を伸ばすなら、太山寺から北に10分余の「神戸ワイナリー(農業公園)」がお勧めです。神戸のブドウから造る神戸ワインのふるさとです。1983年に本格的にワイン醸造を始めました。広々した園内にはブドウ畑が広がり、気持ちよく散策できます。建物内にワインショップ、カフェなどがあり、バーベキューも人気です。すぐ近くの江崎グリコの「グリコピア神戸」では、お菓子について学べます。予約が必要ですが子ども連れには楽しそうです。

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神戸ワイナリーのブドウ畑と建物

以上のように太山寺を中心にした西区も、神戸観光の選択肢の一つです。検討してみてはいかがでしょう。

INFO

太山寺
住所:神戸市西区伊川谷町前開224
TEL:078-976-6658
拝観:8:30~17:00(12~2月は16:30まで)
拝観料:300円

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