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2023.07.20

異国情緒あふれる神戸の 築100年のレトロ建築で昼食を!

異国情緒あふれる神戸の 築100年のレトロ建築で昼食を!

神戸のレトロ建築を内外から見るだけじゃ物足りない。約100年の歴史を迎える建物で、五感に響くカフェやレストラン施設のご紹介です。

神戸といえば、古くから海外の入口として神戸港が開かれ、異国情緒あふれる港町として栄えてきました。約100年近く経つレトロな洋風建物が、戦争や震災をも乗り越えて、現在もその佇まいを当時の姿そのままに残し、食事をいただける場所があります。

豪華なコース料理からリーズナブルなランチプレートまで、レストランやカフェを併設した建築物をたっぷりご紹介いたします。

タイムスリップ気分で、好みの建築の様式美に、酔いながらランチを堪能できることでしょう。神戸のレトロ建築の沼にはまるかもしれません。

LE UN(ルアン)神戸迎賓館 旧西尾邸

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旧西尾邸(兵庫県指定重要有形文化財指定)は、門から歩いていくと木々の間から館が見える

神戸市須磨区の西尾家住宅は1919年(大正 8年)に、神戸の貿易商として活躍した西尾類蔵の邸宅です。約1万平方メートルの広大な敷地が、海を望む須磨に建てられました。

設計は、初代通天閣を手がけた建築家の設楽貞雄。建設当時「森の中にある館」をイメージし、木々が成長した100年後の完成を見据え建てられました。2010年に兵庫県指定重要有形文化財に指定されています。

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洋風のバルコニーのように見せた窓の外には枠だけが取り付けられている

旧西尾邸は、19世紀後半に流行した英国のビクトリア朝様式が時代に先駆けて取り入れられました。世界的に流行したアール・デコの意匠が随所に見られます。

正面玄関の石段の穴からは、海風で冷えた客をもてなそうと、セントラルヒーティングで暖房が配備されるなど、大正時代の最先端の技術と贅を尽くした造りが伺えます。

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エントランスの右柱だけ阪神・淡路大震災で割れたため、色が違う。

応接室は、当時の姿のまま残されている部屋。施工を行ったのは宮大工で、釘を使わない宮大工達の匠の技や、木造建築ながら最先端の海外の技法を取り入れられました。

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上下スライド式窓は、震災でも壊れることはなかった

各部屋には、デザインの異なる美しいステンドグラスが、施されています。階段の吹き抜け部分の大きなアーチのステンドグラスは圧巻。窓の光が壁に美しく差し込みます。

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美しいステンドグラスが現存する

大正時代、電気を使った照明は富の象徴でした。時を経て青く変色した銅のペンダントライトから芸術性の高さを感じます。明るく灯される光は電球以外は当時のまま、ガラスには波の絵柄が施されています。

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この部屋のステンドグラスは、唯一具象のかもめが描かれている

2階鳳凰(ほうおう)の間には、迎賓のための書院造の座敷があります。鳳凰の欄間や、網代天井、そして組木細工の障子、最高の職人の技法が施された和室で、来賓客をもてなしていました。現在は、披露宴会場としても利用されています。

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職人が最高の技巧の尽くした伝統工芸をいくつも見ることができる

神戸迎賓館として、大正ロマンあふれる旧西尾邸公開

旧西尾邸は、大正文化と館を後世に末長く引き継ぐため、ウェディングやパーティ会場の神戸迎賓館 旧西尾邸、またレストランLE UN神戸迎賓館として2012年にオープンしました。それまで私邸だった館を保全し残していくために、一般に向けて公開することに舵を切ったのです。

先祖の残した邸宅を守り続けたい西尾家の前オーナーの強い思いと、日本文化や歴史的な価値ある建造物を残す活動をする企業が出会い、庭園と建物が移転や増改築することなく当時そのままの姿で現代に引き継がれています。

同店の利用が旧西尾邸の文化財としての保全活動への貢献につながります。

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西尾家の主人が書斎として使用していた、今はレストランとして多くの客で賑わう

兵庫県指定重要有形文化財には「主屋」に加え、客室として使われた離れ「松風閣」、茶室「真珠亭」、炭火焼き小屋「石炭庫」、馬小屋「車庫」の五つの建物が指定されました。

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客人が泊まった離れ「松風閣」(左奥)、茶室「真珠亭」(右)

LE UN 神戸迎賓館 ランチコース料理

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窓際の席は景色もよく、昼間は太陽の日が注ぎ、冬でも暖かい

地産地消を念頭に、地元の食材がふんだんに使われたフルコース「デジュネB」。料理は、地元神戸のホテルで20年の経験を持つ久保田剛史シェフが腕を振います。

■真鯛のマリネとジャガイモのムース。前菜は、特に彩鮮やかにインパクトを与えられるように、ピンクにかわいく演出されていました。

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■蕪と桜海老のポタージュ カプチーノ仕立て

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■魚料理
・鰆のオイルコンフィー ヴェルデュレットソース

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■肉料理
・神戸ポークフィレ肉のロティ―と腿肉のカイエット

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■神戸迎賓館パティシエ特製デザートと食後の飲み物

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写真は、地元の旬の食材を盛り込んだル・アンのフルコースランチ「デジュネB ¥ 5,400」 (税込サ別)
※写真は3月〜5月メニュー、仕入れ状況によりメニューは予告なく変更になる場合が有ります。

おもてなしは各スタッフの考えから

LE UN 神戸迎賓館では、人生の節目となるアニバーサリー利用も多く、披露宴会場としても使われます。

「お客様が最高の体験ができるようにと、特にマニュアルは無くスタッフ自身の考えでおもてなしをしています」と、支配人の駒田智哉さんは言います。きっと誰もが記憶に残る大切な時間を過ごすことができるでしょう。

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文化財保全の一環として、大正建築の趣あふれる旧西尾邸を知ってもらおうと、食事利用された方に館内を案内もしているので、一度リクエストしてみてくださいね。

InformationLE UN 神戸迎賓館 旧西尾邸
住所 兵庫県神戸市須磨区離宮西町2-4-1
アクセス 山陽電鉄 月見山・須磨寺駅より徒歩10分/JR線 須磨駅より徒歩15分
電話番号 078-739-7600
営業時間 ランチ ︎11:30~15:30(L.O.14:00)
ディナー 17:30~22:00(L.O.21:00)
定休日 ︎︎︎火曜日
公式サイト https://www.vizcaya.jp/restaurant/

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)

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デザイン・クリエイティブセンター神戸は、昭和初期建築

神戸港を臨む、昭和初期(旧館1927年、新館1932年)に建築された生糸検査所は、現在デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO/キイト)と名称を変え、デザイン・アートなどの催し物や図書館(期間限定)が入り、時代を超えて多くの人が利用する神戸の新しい拠点となりました。

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2階に生糸検査所ギャラリー、無料で見学ができる

生糸検査所として誕生

KIITOはその名の通り、当時主に西日本で生産された生糸の検査所として誕生。生糸の品質検査を行っていた場所で、検査された生糸は、すぐそばの神戸港から世界中へ輸出されました。

関東大震災の影響を受け、関東地域の生糸検査を担うことになり5年後に国に移管し新館が増設、さらに規模が拡大します。

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デザイン・クリエイティブセンター神戸の重厚な造りの入口とレリーフ

広報の大泉愛子さんは、「生糸検査所では、重量や繊度、強度などを検査していました。色々な検査を経て、生糸の『等級』がつけられています」とギャラリーを案内します。蚕を飼っていたわけではないんですね。水分検査器は、現在カフェのテーブルとして活躍しています。

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生糸の水分検査器がカフェテーブルとして活躍、配管からBGMが流れる

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入口階段の蚕のレリーフ

「2012年にリノベーションされ、KIITOが誕生しましたが、一時代を築いた生糸検査所の歴史を継承し、出来るだけ当時のものを残し今に生かすという考えの元に、現役を退いた什器や検査機器を現在も館内で活用しています」と解説します。

当時の配管にスピーカーが仕込まれ、どこからともなくBGMが流れるユニークな使い方には驚きました。

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KIITO CAFE内に、重厚で堅牢な当時の机は今も使われている

2022年から期間限定でKIITO2階に、神戸市立三宮図書館が入りました。図書館内には思わず長居したくなる楽しい仕掛けが多数あり、子供から大人まで利用滞在時間が移転前に比べ伸びているんだとか。

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市立三宮図書館入口、通称「KIITO三宮図書館」キッズスペースなどが充実

ランチやスイーツが楽しめるKIITO CAFE

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KIITO CAFE 日替わりランチプレート¥850+セットドリンクのカフェラテ¥350

「KIITOカフェは当時使われていた家具や検査機器を再利用するなど、趣ある落ち着いた空間作りが特徴です」と大泉さんは言います。

地元兵庫県産の食材をふんだんに使い、優しい味のお料理が毎日提供されます。使い込まれた重厚な木のテーブルは時を超えて現在へ引き継がれています。

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人気は、数量限定の日替プレートランチ(850円)、オムライス(850円)、パスタ(950円)が定番メニュー。

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この日は、人気メニューの一つハンバーグプレートランチ。デミグラスソースたっぷりのぎゅっとお肉の詰まった煮込みハンバーグと、五穀米、きんぴら、サラダは、ワンプレートながらボリュームがあります。

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KIITO CAFE店長でシェフとバリスタもこなす上田卓也さん(左)

和食、イタリアンから中華まで幅広いジャンルの料理を提供。

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バラが描かれたラテアート

上田シェフは、ラテアート全国大会「junkies cup 2018」で優勝した腕前の持ち主で、カフェラテをオーダーすると、おしゃれなラテアートが楽しめるでしょう。

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InformationKIITO CAFE(デザイン・クリエイティブセンター神戸内)
住所 神戸市中央区小野浜町1-4 1F
アクセス JR 三ノ宮、阪急・阪神線神戸三宮駅、神戸市営地下鉄西神・山手線三宮駅より徒歩約20分
電話番号 078-332-7102
営業時間 火~金曜 11:30~16:00(L.O 15:30)
    土曜 11:30~15:00(L.O 14:30)
定休日 ︎︎︎日曜・月曜、臨時営業あり

Facebook https://www.facebook.com/KIITOCAFE/
Instagram https://www.instagram.com/kiito_cafe/

旧神戸居留地十五番館

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旧神戸居留地十五番館正面より

旧神戸居留地十五番館は、1880年(明治13年)頃に建設され、翌年から10年間はアメリカ領事館として活躍していました。1989年に国の重要文化財に指定されました。

1995年の阪神・淡路大震災で全壊したものの、倒壊前の部材70%を使用し耐震・免震構造を施して、奇跡の復活を果たした唯一無二の建造物です。

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2階個室

日本で最初のアメリカ領事館ということで、過去には駐日アメリカ大使が立ち寄ったこともありました。

旧神戸居留地十五番館のここを見てほしい

この建物で見てほしいところは、大きく3つ。

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2階ベランダの柱

2階にベランダを持つコロニアル様式で、柱はややふくらみを帯び、柱の上部に渦巻き状のつる草が施されています。

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2階への入口のアーチは、古代ギリシャでも使用されていたイオニア式、「ヴォリュート」という渦巻形が確認できます。

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三つ目は、アメリカ製の暖炉の足元に使われたタイルの絵柄。竹や梅など、なんとも日本らしいデザインが施されています。

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1階レストラン

歴史の荒波を超えた神戸で一番古い異人館で、フランス料理をいただけます。

神戸旧居留地の異人館レストラン TOOTH TOOTH maison 15th

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神戸発祥のTOOTH TOOTHが提供するコース料理を、クラシカルでモダンな異人館で楽しめます。

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■ランチ メゾン15コース  ¥7,590(税込)※季節によりメニューは変わります
・季節のタルティーヌ、野菜のムース(写真左手前)
・帆立のマリネ オレンジと麹のソース サワークリーム(写真中央)

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■香住ズワイガニと芽キャベツのリゾット 柚子の香り

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■鮮魚のポワレ ブールブランソース 春野菜添え

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■黒毛和牛のロースト マディラソース

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■本日のデザート、クリームブリュレと飲物

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InformationTOOTH TOOTH maison 15th
住所 神戸市中央区浪花町15番地 旧神戸居留地十五番館
アクセス JR・阪神元町駅より徒歩7分、神戸市営地下鉄旧居留地・大丸前駅より徒歩5分
電話番号 078-332-1515
営業時間 11:00-22:00
ランチ11:00-15:30(L.O.13:30)
アフタヌーンティー15:00-17:30 ※要予約
ディナー17:30-22:00(L.O.19:30)
定休日 ︎︎︎不定休
公式サイト https://toothtooth.com/restaurant/maison-15th
Instagram https://www.instagram.com/toothtooth_maison15th/
【取材・文・撮影】三島千靖(デザイナー/ライター)

神戸出身ライター。地元目線で企画・取材・執筆と撮影を担当。経営者インタビューや、寺社仏閣・食・ローカルネタが得意分野、取材件数は500件を超える。最近では広報・コンサル支援にも携わっている。

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