街バルイベントやBAR×ソースコラボから見える、神戸の事業者たちの切実な思い
ある日、神戸の回らないお寿司屋さんでのこと。幻の魚といわれるクエ、大トロ、イクラ、そしてワイングラスで供される日本酒が、税込2,000円でいただけるという「事件」がありました。

これが2,000円だなんて……本当にいいの!?
種明かしをすると、10月12日にトアウエスト(元町のトアロードの西側エリア)で行なわれた街バルイベント
「VAMOS!TOR WEST ノミニイコウ」に出店した、お寿司屋さんのメニューだったんです。
それにしても、神戸のど真ん中で街バルイベントなんて、珍しいと思いませんか? そこには、仕掛け人たちの切実な思いがあったのです。
街バルで味わう「色々ちょっとずつ」
街バルとは、参加者がエリア内の複数の飲食店を「はしご」する、地域活性化を目的としたグルメイベントのこと。
VAMOSトアウエストでは、はじめに参加表明の缶バッジを購入して、参加店舗の一覧が載った地図をもらいます。

バルメニューは「ドリンク1杯+自慢の品」が1,000~2,000円で提供されます。地図にメニューが載っているので、気になるお店を巡っていくスタイル。
参加店舗は27ありましたが、私が完全に自分の好みに任せて巡ったのは、この4店舗です。
・ウラオレギョ 焼餃子・しそ餃子のハーフ&ハーフ+レモンサワー
・サムズバーベキュー 骨付きポークリブ+モヒート
・鮨 島本 おまかせ握り3種+日本酒
・イロハニリベロ マスカルポーネ鰯パン&エスニックアテ+ウーロン茶

1軒目のウラオレギョ以外は、初めて知る店ばかり。トアウエストといえばファッションや雑貨のエリアというイメージがあったので、飲食店がこんなにあるのか!と驚きました。

冒頭のお寿司屋さんは3軒目に。店内も本格的で、街バルのイメージをいい意味で裏切っています。

また世界のいろんな文化が好きな私にとって、4軒目のエスニック居酒屋を発見したことは、人生のプラスになりそうです……!

中には、入店に並び列ができることも。でも暑くも寒くもなくてちょうどいい季節ですし、苦にならないですね。

参加した皆さんにお話を聞くと
・神戸の友達に誘われて、京都から来た
・新しいお店を知れるのがいいですね
・お寿司屋さんは80分も並んだけれど、その価値はあった!
・たまに1人飲みをすることがあるけれど、1人だと1皿しか食べられなかったりするので、いろいろ少しずつ食べられるのが嬉しい
など、参加の動機や感想はさまざま。きっと参加した人の数だけ、新しい発見や楽しさがあったでしょうね。
私も、お腹も心もいっぱいでめちゃくちゃ楽しかったです!

ナイトタイムエコノミーに事業者×神戸市が本気!
この「VAMOS!TORWEST ノミニイコウ」は、今回が初めての試みでした。ことし2月に二宮エリアで「VAMOS 二宮」という街バルを開催したところ好評だったため、トアウエストでもやってみよう!となったそうです。
トアウエストや二宮などに店舗のある「神戸餃子オレギョ」を運営し、今回のVAMOSトアウエストで代表を務めた上川路(かみかわじ)純弥さんにお話を聞きました。

「前回の二宮では、お客さんがいろんな店を知るきっかけになり、イベント後の次回来店につながっています。またイベント前より、地域の店どうしのつながりが濃くなりました」
なるほど。お客さんにも店側にも、街バルはWIN-WINな取り組みなんですね。それにしても、トアウエストにせよ二宮にせよ、三宮のすぐ近くですから、こんなイベントをしなくてもお客さんが来るのでは?
「いえ。2014年からトアウエストで店をしていますが、当時に比べて歩く人が減ったと感じます。今日はイベントだから人の往来がたくさんありますが、以前はふだんの土日でこれくらい賑わっていました」
やはりコロナ禍の影響は小さくなかったようで、10年前と比較すると、街の盛り上がりが足りないという思いは切実なようです。
だからこそ、こうやってイベントや企画で「街歩き」「夜遊び」を楽しんでもらおうと仕掛けているんですね。
2回目の開催も視野に入れているそうなので、記事末尾のInstagramをフォローしておいてくださいね。

実は神戸市も、そんな仕掛け人の事業者のみなさんを応援しています。「ナイトタイムエコノミー推進事業補助金」という補助金制度をつくって募集したところ22件の応募があり、うち15件を採択しました。
このVAMOSトアウエストも、そのうちの1件です。上川路さんも「地図やバッジを製作するのに、補助金はすごく助かりました」とホッとした表情を見せていました。
次はBAR×ウスターソース!?
採択事業の一覧を見ていただくと、ユニークな事業がたくさんありますね。
その中でもちょっと目を引くのが、「神戸BAR×ウスターソースプロジェクト」です。企画者は、創業100年を超えるオリバーソース株式会社。
バーとウスターソースのコラボ? まったく想像がつきません。そもそも、どんなプロジェクト内容なのでしょう?
洋食に欠かせないウスターソース。普通は寝かせる製法ではないのですが、オリバーソースは3年間も熟成させたウスターソース「クライマックス」を開発しました。
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今回のプロジェクトでは、提携する15のバーで、その特別なウスターソースを使ったカクテルまたはバーフードを提供します。
それにしても、ウスターソースがコラボするなら、普通は食べ物を扱うレストランだと思いませんか? なぜお酒をメインに扱うバーなのでしょう?
オリバーソースの代表・道満龍彦さんに聞くと、「熟成」に反応する客層はどこだろう?と考えると、ワインやウイスキーを熟成させるイメージから、バーを思いついたそうです。
そこで商品のボトルもお酒のようなデザインを意識し、神戸がナイトタイムエコノミーに力を入れていることを知って、バーにコラボを持ちかけたとのこと。
開港から早く洋食を取り入れてきた神戸では、ソースメーカーがたくさんあります。「バーが神戸の文化と言われるように、ウスターソースを神戸の文化の1つにしたい」と言う、道満さんの思いのこもったプロジェクトです。
本プロジェクトはすでに始まっており、来年2月まで開催中です(ソースがなくなり次第終了)。
さっそく、提携バーをいくつか巡ってみました。
Bar Andante(バー アンダンテ) 提供:ブラッディ・メアリー
「当店はモスコーミュールとブラッディ・メアリーが看板メニューなので、うちと相性抜群の企画ですね」
ブラッディ・メアリーはトマトジュースとウォッカのカクテルです。もともとレシピにソースを加えることが多く、今回はふだんのソースの代わりに熟成ソースを使ったのですね。

BAR EmiNa(バー エミナ) 提供:ブラッディ・シーザー
「お客さんとの会話のきっかけになるし、おもしろい企画ですね」
ブラッディ・シーザーは、はまぐりエキスの入ったトマトジュースを使ったもの。飲んでみると、やはり熟成ソースならではのコク、深みを感じます。お酒なのですが、レストランで冷製スープを飲んでいるような感覚です。

ところで、グラスのアニメ柄やカウンターに置かれたフィギュアがユニークですよね。実はこのお店、サブカル系バーなんだそうです。
街バルもそうですが、知らなかったお店を知れるのも、こうした企画の大きな魅力ですよね。
プロジェクトの参加バーは、以下の16店舗です。
1.SHOT BAR SPROUT (ショットバー スプラウト)
2.Bar HONOR (バー オナー)
3.Bar Le Bateau (バー ルバトー)
4.bar Prive (バー プリヴェ)
5.BAR alf (バー アルフ)
6.Bar Andante (バー アンダンテ)
7.Bar domingo (バー ドミンゴ)*宝塚市
8.Brick(ブリック)
9.BAR SLOPPY JOE (バー スロッピージョー)
10.SAVOY hommage (サヴォイ オマージュ)
11.Bar SanCristobal (バー サンクリストバル)
12.SHOTBAR Barrel (ショットバー バレル)
13.ANCHOR (アンカー)
14.BAREmiNa (バー エミナ)
15.Bar Automatic (バー オートマティック)
16.YANAGASE (ヤナガセ)
BAR×ウスターソースという意外な組み合わせは、きっと体験しないとピントこないはず。
ぜひご自身の目と舌で確かめてくださいね!
INFORMATIONインフォメーション
| VAMOS!TOR WEST ノミニイコウ | |
|---|---|
| 神戸市 ナイトタイムエコノミー活性化の取り組み | |
| 3年熟成ウスターソース「CLIMAX 神々による進化」 |
【ライタープロフィール】
合楽 仁美(ごうらく ひとみ)
神戸出身&在住のライター。経済メディアNewsPicksなどで活動。
2025年3月まで神戸市公式noteのライターを務めた。
お酒は弱いが酒場の雰囲気が好きで、数年前からバー巡りに凝っている。
縁側があって海の見える家に住むのが夢。