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2020.08.05

須磨ごよみ 夏

須磨ごよみ 夏
神戸市西部に位置する須磨区。風光明媚な土地の魅力を、在住ライターが季節ごとにお伝えします。

「東の湘南、西の須磨」として名高い神戸の須磨海岸は、毎年関西一円から大勢の海水浴客を集める人気スポットです。しかし、この夏、新型コロナウイルス流行の影響で、須磨の海開きは見送られました。須磨海水浴場の開設中止は、記録が残っている1982年度以降で初めてのこと。

とても残念ですが、それでも須磨に海はあります!
泳げなくても十分楽しい、泳がないから楽しめる―そんな海辺の魅力を再発見。

例年の夏なら多くの海水浴客でにぎわう須磨海岸


その1 微小貝を愛でる

「微小貝」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
大きさが約1cm以下の小さな貝の総称です。稚貝ではなく、小さいけれど、れっきとした大人の貝。体が小さい分、環境の影響を受けやすいため、健全な海岸でしか見つけることができません。

年に数回、須磨海岸で微小貝の観察会を実施している公益社団法人大阪自然環境保全協会(ネイチャーおおさか)によると、須磨海岸は1年中たくさんの微小貝を見つけられる「ホットスポット」なのだそうです。

加えて、JR神戸線須磨駅の真ん前!という好立地。何時間も車を走らせなくても、路線バスを乗り継がなくても、電車で気軽に簡単に行けるビーチ、それが須磨海岸なのです。海水浴客であふれ返る例年の夏場だと、小さな貝は踏まれて壊れてしまうため、微小貝観察は難しいのですが、海水浴場が開設されない今夏は、むしろ好機と言えそうです。

駅を出たらすぐ砂浜。「ビーチに駅」というイメージ

微小貝観察に詳しい同協会・田中広樹さんのイチオシスポットは突堤付近。波が突堤にぶつかることで、貝殻がたくさん浜に打ち上げられます。
その言葉に従って、私も突堤付近を捜索してみたところ、微小貝に限らず、大小さまざま、色とりどりの貝の出てくること出てくること。意匠的とも思える貝の造形に心奪われるもよし、好みの色・形の貝を探すもよし。お気に入りを見つけて小瓶などに入れてお部屋に飾るのもいいですね。小さな貝殻をネイルアートに使う人もいるそうです。

小さくてもちゃんと巻いている貝。いとおしい。
貝以外にも、フジツボ、ウニ、ヒトデ、サンゴ、カニやイカの甲など、色んな物が打ち上がります。
「季節によって、行くタイミングによって、多かったり少なかったりします。種類もその都度違うので、今日はどんなふうだろうとワクワクしますよ」と田中さん。同協会はホームページ上で「微生貝さがしサポート図鑑」を運営しています。参考にしてみてください。

夏の思い出とともに小瓶に閉じ込めて…


その2 遊び場 学び場 須磨の海

須磨の子どもたちにとっては、ビーチは「巨大な砂場」。
「海岸線はいつも波で洗われているから衛生的。近所の公園よりも、ためらいなく大胆に遊ばせることができるよね」と話すパパ・ママもいます。ということで、お砂場セットを持って今日も海へGO!

ビーチでのお砂遊びの素晴らしさは、何と言っても1人当たりの面積が広いこと! キープ・ディスタンスもバッチリです。水はすぐそばにいくらでもあるから、砂でお山を作ってトンネルを通して水を流す―といった子どもが大好きな遊びも簡単にできます。

砂浜は「巨大な砂場」
海辺で、子ども連れに大人気のスポットがあります。JR須磨駅から東に少し歩いた場所、千森川河口部。潮の満ち引きで時間帯によって干潟が現れます。海水と淡水が混じり合う汽水域の環境がよいのか、さまざまな磯の生き物を観察することができます。
群れをなして泳ぐ小魚、カニ、ヤドカリ、エビ、イソギンチャクなどが短時間に面白いほど見つかります。小さめの虫捕り網と飼育ケースを持っていくとよいですが、加えて持参したいのが卓上のりの空き容器。スコップ代わりに砂を掘ったり、見つけた生き物を追い込んだり、獲った生き物を観察したりするのに便利です。

豊漁。入れ物はのりの容器
6月下旬、お昼前に子どもと一緒に海に出かけてみると、ちょうど潮が引いていくところでした。しばらく観察していると、水が少なくなるにつれて、カニやヤドカリが続々と出てきました。カニは比較的簡単に見つけられますが、子どもが特に喜ぶのはヤドカリ探しです。
流れがない場所でヒョコヒョコ動いている小さな貝を捕まえてひっくり返してみると…大当たり!ヤドカリは貝の中に慌てて隠れてしまいます。

自分で獲った!と子どもは大喜び
この日は、とても珍しい収穫も。砂粒の中から、天然物らしき真珠を見つけたのです!いびつな形で色ムラもありましたが、おそらくそうそうないこと。海は偉大です。

磯遊びで見つけた天然真珠
楽しく遊んだ後は、生き物たちをリリース。急ぎ足で海に帰っていくカニたちに別れを告げ、「また遊びに来ようね」と子どもと約束しました。親子で遊べて学べる須磨の海。足洗い場で砂を落として帰るとき、いつも清々しい気持ちになっている自分に気づきます。磯遊びはやめられません。

捕われてちょっと恨めしそう

【注1】海水浴場が開設されず、ライフセーバーの配置がない今年の須磨は遊泳禁止。長時間滞在も禁止されており、その旨の現地放送も行われています。マスクを着用し、他者との距離を取って、短時間で海を楽しみましょう。

【注2】天候が穏やかでも、水辺の遊びには常に危険が伴います。海へ行くときは親子一緒に。小さなお子さんから目を離さないようにしましょう。必要に応じて、ライフジャケットやウオーターシューズなどの活用も検討してみてください。

須磨海水浴場ご利用ガイド – 須磨観光協会
新型コロナウイルス感染予防を呼び掛ける立て看板


オススメ!海のおとも

夏のビーチで食べたい物といえば?「海の家」の焼きそばに冷やし中華、かき氷、…。でも、海の家がない今年はどうしましょ?
ご心配なく!須磨海岸近くにはバラエティに富んだ飲食店、ショップがたくさんあります。テイクアウトして、海を眺めながら食べてみませんか?
須磨っ子オススメの「海のおとも」をご紹介します。

◇ ◇ ◇

コッペ・プリュスのコッペパンサンド

 昔ながらの素朴なコッペパンに、色んな具材を挟み込んだ食べ応えのあるサンドウィッチ。
「あん&バター」(1個260円)「ピーナッツクリーム」(同200円)「フルーツ&ホイップ」(同260円)などのおやつコッペ、「チキン南蛮コッペ」(同430円)「ハムカツコッペ」(同310円)など食べ応え十分のおかずコッペを、常時30種類以上取り揃えています。

「チキン南蛮コッペ」(左)とミニサイズの「フルーツ&ホイップ」
母体の㈱ヒシヤ食品(垂水区)は兵庫県学校給食パン指定工場。専務の小川恵美子さんは、以前、東京でコッペパン専門店を見かけた際に「長年コッペパンを作ってきた当社こそがやるべき事業」と確信して、専門店の構想を練り始めたそうです。
5年前、山陽電車月見山駅から南へ2分、JR須磨海浜公園駅から北へ徒歩5分の場所に「コッペ・プリュス」を開店。赤と白を基調とした小さなかわいいお店には、いつもお客が絶えません。

厳選材料を使って毎朝垂水区の自社工場で焼き上げるパンは、ふっくらこんがりキツネ色。それだけで食べてももちろんおいしいのですが、「あくまでサンドですから、パンがおいしすぎてはいけません」と小川さん。挟む具材の味を引き立てる配合を工夫しているそうです。
主役の具材には相当なこだわりが。あんは西区の池田製餡所、モチモチとした食感が楽しい白玉は本場・熊本から仕入れ、人気の国産牛スジカレーは、店で丁寧に仕込んでいます。
「スタッフは女性ばかり。皆、味にうるさくて、ああでもないこうでもないと言い合いながら新商品開発に取り組んでいますよ」とのこと。

季節限定商品や全国各地のご当地具材を使ったメニューも人気。
レギュラーサイズより一回り小さいミニサイズもあり、こちらは違った味のサンドを2つ食べたいときや、小さなお子さんにもぴったりです。トッピングも多彩で自由自在、あなた好みの味を追求してみてください。
用意したパンがなくなり次第店じまいなので、早い時間帯に行くのがGood!です。

赤いテントが目印の「コッぺ・プリュス」

コッペ・プリュス
神戸市須磨区月見山本町2-1-6
☎078-732-1150
午前9時~午後4時(売り切れ次第終了)
日曜休み
※価格は税込

◇ ◇ ◇

水野家JR須磨駅店のコロッケ

「水野家」と書いて「みずのや」と読む―。神戸市民に絶大な人気を誇る人気コロッケ店チェーンです。
昭和32年、灘・水道筋で創業した精肉店が原点で、コロッケ店「水野家」としての歴史は30年以上になります。地元デパートやスーパーにも多数出店していて、黄色と茶色のロゴ「コロッケと…」で有名。関西の直営店は24店を数えます。近年は通販も手掛けており、全国に水野家ファンを増やしています。

須磨海岸付近では、JR須磨駅改札を出てすぐ、駅建物からビーチに降りていく階段の手前にお店があります。海岸までは数十秒といったところ。店頭の冷蔵ショーケースには、衣を付けた状態のコロッケやミンチカツなどがずらり。仕事帰りに購入して帰宅する人も多いですが、少し待てばその場で揚げてもらえるので、テイクアウトして砂浜で食べる人の姿が多く見られます。
誰かが食べているのを見ると、自分も無性に食べたくなってしまう。そんな魔力がコロッケにはありますね。海との相性は抜群です。

「水野家JR須磨駅店」。写真右手の階段を下りるとすぐ砂浜
水野家の信条は「昔ながらのおいしさ、丁寧な仕事、余計なものは入れない」。
店の一番人気は「和牛ビーフコロッケ」(1個118円)。ジャガイモは北海道産が中心で、時期によって最高の産地と品種を厳選しているそうです。イモは蒸さずに茹で、つぶすのではなく細かくカットすることで風味を残すように調理しているとか。淡路産のタマネギはしっかり炒めて甘みを出し、肉は黒毛和牛のみを用いて肉と脂とをバランス良く調合。ラードとヘッドをブレンドした揚げ油が「お肉屋さんのコロッケ」の味を醸し出します。

「和牛入りミンチカツ」(同237円)も人気。黒毛和牛ともち豚が絶妙なバランスで配合されており、やはり淡路のタマネギが甘みを添えます。ジュワーッと染み出る肉汁の旨味がたまりません。
腹ペコさんには、コロッケパン(同172円)がオススメ。揚げたてを特製ソースにくぐらせてパンに挟んでいただきます。これぞ王道の味。

一番人気の「和牛ビーフコロッケ」
水野家JR須磨駅店
神戸市須磨区須磨浦通4-2-1、JR須磨駅構内
☎078-739-6000
午前10時~午後8時
無休(年始休業)
※価格は税込
◇ ◇ ◇

グレイトフルズオーシャンダイナーズ店のグルメバーガー

JR須磨駅から砂浜に下りてすぐの場所にあるレストラン「グレイトフルズオーシャンダイナーズ店」は、五感で海を感じながらゆったりと過ごせる店。通年営業の「海の家」のような存在です。
テラス席も充実していて、散歩の途中でちょっとひと休みしてお腹も満たせるおしゃれなスポットです。

メニューの中心は「グルメバーガー」と呼ばれるリッチな具材を使ったハンバーガー(680円~)。「フィッシュ&チップス」(780円)「ロコモコ」(980円~)「グリルステーキ」(1980円~)などのフードメニューもあり、いずれもテイクアウト可。
予約すれば、屋上で手ぶらでリッチに楽しめるBBQコース(2日前までに4人以上で予約、1人3800円)も楽しめます。

究極のオーシャンビュー。屋上テラス席でランチ
運営しているのは、㈱グレイトフルパートナーズ(加古川市)。須磨海岸に出店した理由について、社長の 古林 宗恵こばやし むねさとさんは「日常からエスケープしたような空間と時間をお客さまに提供したかった」と話します。

自身は調理師専門学校を卒業後、ホテルやベーカリーで勤務した経験を持ち、味には相当なこだわりがあります。
ハンバーガーのバンズはパティやソースとのバランスを考えて作ったオリジナル。自社工場から届く生地を、毎朝店内のオーブンで焼き上げます。
パティの原料となる牛肉は、精肉販売業許可を持つ本部が大きな塊で仕入れて挽き肉にし、店舗に届けます。パティは注文が通ってから一つひとつ成形し焼き上げるため、いつでも焼き立てで肉本来の旨味を楽しめます。
ハンバーガーのおいしさを決めるソースも、社長自ら吟味を重ねて完成させたオリジナルソースです。

「目指すのは『早くて安くてそこそこ』のファストフードではなく、ゆっくりおいしく食事ができるスロウな空間。ハンバーガーだけでなくオリジナルプレート料理やアルコールなど幅広く取り揃えています。須磨に来られたらぜひお立ち寄りください」と古林さん。
自由な気風の会社らしく、店舗スタッフもオシャレさん揃い。そちらも注目!です。

夜のテラス。カクテルなどアルコール類も豊富【☆】
グレイトフルズ オーシャンダイナーズ店
神戸市須磨区須磨浦通4-9
☎078-742-6190
午前 10時~午後9時 (L.O. 午後8時半)<バンズが売り切れ次第、営業終了あり>
無休(荒天時の臨時休業あり)
※価格は税抜



【文・写真(☆印の写真は提供)】
藤本陽子(ライター)
兵庫県出身。神戸新聞記者を経てフリーに。企業取材、インタビュー、街歩きルポなどを主に手掛ける。季刊BanCul(姫路市文化国際交流財団)編集委員。須磨で1児の子育て中。
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