2021.10.29

アート散歩にワーク・イン・レジデンス体験。六甲山でクリエイティブに過ごしてみよう

アート散歩にワーク・イン・レジデンス体験。六甲山でクリエイティブに過ごしてみよう

首都圏から神戸までは新幹線(のぞみ)で約2時間45分、飛行機(羽田)で約1時間半。意外と近いことにおどろきます。さらに、神戸といえば、異人館に港町、とにかく海の印象が強かったのですが、実は山も繁華街の「三宮」から30分程度で「六甲山」に行けるとのこと。

その六甲山で、この秋、自然の中で楽しめる現代アートの展覧会が開催中。さらに、山の中で宿泊&仕事ができる場所があるとのこと。神戸の自然でクリエイティビティを磨く旅に出かけてみました!

番号は「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」のオフィシャルマップに準じています

六甲山観光がお手軽&お得にできる「六甲ミーツ・アート芸術散歩」

六甲山は日本のトレッキング発祥地なのですが、それを持ち込んだのは「異人館」でおなじみの居留外国人たちでした。海と街から近く、眺望の良い六甲山にゴルフやテニスなどのレジャーも持ち込み、自然の楽しみ方を広げたのです。これにならい、現代アートを通じて六甲山の良さを再発見する催しが「六甲ミーツ・アート芸術散歩」です。開催は2021年で12年目。19組の招待アーティストと15組の公募アーティストによる全34組アーティストの作品が、六甲山の中と、サテライト会場である有馬温泉・JR三ノ宮駅前に展示してあります。

「六甲ミーツ・アート芸術散歩」開催中はシャトルバスが運行。更に「六甲ミーツ・アート芸術散歩」の鑑賞パスポートがあれば、作品が展示してある有料施設にもお得に入館できてとってもお得。11月23日まで開催中です。

  今回は「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」のプレスツアーに参加して、印象に残ったスポット&作品をピックアップします。  

急勾配なケーブルカーで一気に六甲山上へ!「01:六甲ケーブル」

 
 

JR三ノ宮駅から快速で1駅、六甲道駅前から市バスに乗り込み「六甲ケーブル下駅」へ、20分ほどで到着。ケーブルカーと、展覧会のパスポートをこちらで購入したら、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」はもう始まっています。駅内はもちろん、ケーブルカー車内にも作品があるので、探してみて下さい。ケーブルカーは急勾配な斜面を登り、あたりはあっという間に霧の中。六甲山は近いけれど、立派な山なのだと実感できます。

ちなみに、今年の公募大賞作品は、六甲ケーブル山上駅に隣接する「02:天覧台」にあるのでお見逃しなく!(TENRAN CAFE内にも作品あり)

まずは山頂へ!「10:六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅」から歩く

左手のピアノと連動して歌い出す、マスク不要の合唱団は土谷享(KOSUGE 1-16)さんの作品

初めて訪れる山ですから、まずは山頂を目指したくないですか? 体力が心配な人にも安心な、シャトルバスに乗り込んで、「10:六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅」を目指しましょう。「09:六甲枝垂れ」「08:六甲ガーデンテラスエリア」まで、歩いて通り抜けることができます。ここは眺めがいいのはもちろんのこと、作品が集まっていて見応えあり。

六甲ガーデンテラスエリアにある勝川夏樹さんのガラス彫刻は種がモチーフ

ユーモラスな作品から、気持ちの良い小路に展示してあるむき出しの絵画など、作品越しに望む絶景に胸が高鳴ります。

新進気鋭の芸術家が4人でコラボする「07:旧パルナッソスの休憩小屋」

「六甲ミーツ・アート芸術散歩」開催中なら、ふだんは立ち入れない場所にも入ることができます。たとえば、この「旧パルナッソスの休憩小屋」。もともと、ゴルフ場のクラブハウスとして80年ほど前に建てられ、ジンギスカンレストランなど、業態が変わる度に増改築を繰り返してきた建物です。

そしてここに展示してある作品のモチーフは、マニアには「廃墟の女王」として知られる「旧摩耶観光ホテル」。その女王のお相手をしたのは、それぞれに活躍し受賞歴も持つ4人のアーティスト集団です。実際に「旧摩耶観光ホテル」で滞在制作し、絵画制作やホテルで集めた遺物とともにインスタレーションを行っています。

自然散策が楽しい「06:六甲高山植物園」と「05:ROKKO森の音ミュージアム」

運良く「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」のメインビジュアルを作成した長井朋子さんに会えた

「旧パルナッソスの休憩小屋」から徒歩5分、「06:六甲高山植物園」は東入口から入ると、山道を下るので楽に歩くことができます。

六甲高山植物園には5アーティストの作品が展示してあり、今回の「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」のメインビジュアル作品もあり。

また、個人的にいちばん印象に残った作品もここにあります。ドーム状に張った大きな白いフェルトのテント。近づくと黒い糸で刺繍が施されていることが分かります。これを作ったのは滋賀県生まれの「前野めり」さんで、下書きはせず、心のままに針を刺していくスタイルだとか。むき出しの前野さんの心が、森の中にポンと置かれていて、会期終了間際には、どんな姿になっているのだろうと思いました。

「ROKKO森の音ミュージアム」は自然の中でオルゴールなどの音を楽しむ施設ですが、眺めのいいテラスやツリーハウスがあってフォトジェニックです。

森の音ミュージアム横の作品「101」でも、読書をする作者の寺岡波瑠さんに出会えた
information 六甲ミーツ・アート芸術散歩2021
開催期間:2021年11月23日(火・祝)まで
※六甲山サイレンスリゾートのみ、10月の毎週月曜休業。
開催時間:10:00~17:00(一部夜鑑賞の作品もあり)

ちょっと寄り道。日本一標高が高い場所にあるウイスキー蒸溜所

「ROKKO森の音ミュージアム」のあとはバスに乗って、「記念碑台」へ移動するのがおすすめ。作品巡りの後に、ちょっと寄り道はいかがですか?

やって来たのはこの夏にオープンしたばかりの「六甲山蒸溜所」。ここは標高800メートル、日本一高い場所にある蒸溜所だそうです。作っているのは、六甲の水を使ったウイスキーです。

「ウイスキーはできあがるまでに、長い熟成期間が必要です。ですから、いま販売しているウイスキーはスコットランド産の原酒を使用して、六甲の水を調合しています」そう話してくれたのはCEOの久岡卓司さん。

六甲山蒸溜所CEOの久岡卓司さん

「もちろん、ここで蒸留したウイスキーも仕込んでいますよ。でも、ウイスキーを作るのに、人間ができることはほとんどありません。泥炭(ピート)でいぶした大麦を糖化、発酵させてアルコールをつくり、蒸留を繰り返して原酒をつくります。できあがったばかりの原酒は透明で、何年も寝かせることで琥珀色に変化していきます。使用する樽は香味がついたシェリー樽を使うのが一般的ですが、六甲山蒸溜所では桜の木を使った新樽でも仕込んでみました。あとは待つだけです。どんな味わいになるのか、コントロールすることなんてできないんですよ」

六甲山の水は花崗岩で磨かれ、口当たりが良いといわれています。でも六甲山蒸溜所でできあがったウイスキーと一緒に味わえるのは、もう少し先のようです。

「そうですね、あと10年後くらいでしょうか」

その年月も味わえるのが、ウイスキーの魅力なのだと、久岡さんは笑いました。

information 六甲山蒸溜所
住所:神戸市灘区六甲山町南六甲1034-229
TEL:078-894-2225
営業日:一般見学は毎週日曜日
① 10時~10時30分 / ② 11時~11時30分
③ 14時~14時30分 / ④ 15時~15時30分
※毎回10名まで、要予約

森の中に拠点を持とう! 泊まれる森のシェアオフィス「ROKKONOMAD」

共有部分のテラスではBBQもできる

六甲山での宿泊は、リゾートホテルからキャンプまでいろいろあります。でも、せっかくならクリエイティビティを磨けそうな、泊まれる森のシェアオフィス「ROKKONOMAD」はいかがでしょうか。2021年の春から創業した、コワーキングスペース兼宿泊施設です。

開放的なワークルーム。ついたて付きのデスクなら集中力も高まりそう

見晴らしのいい斜面に立ち、もとは旭化成の保養所だったといいます。木々に囲まれた気持ちの良い場所ですが、通信環境はちゃんと光回線。大きな窓が開放的なワークルームで仕事もはかどりそうです。でも、なぜ、山の中に「仕事場」を作ったのでしょうか。お話しを聞かせてくれたのは、ROKKONOMADのマネージャーのヤンセン尚子さんです。

ROKKONOMADのマネージャーのヤンセン尚子さんと、旦那様でアーティストのヤンセンロクさん

「ROKKONOMADは神戸市が推進する“六甲山上スマートシティ構想”に基づいて、いきいきライフ阪急阪神と、“神戸R不動産”を運営する有限会社Lusieで行っています。わたしは有限会社Lusieの所属なのですが、代表はもともとローカルエコノミーに興味があり、北野でもファームスタンドという神戸産の農水産物の地産地消カフェ(販売もあり)のほか、シェアオフィスをやっています。六甲山の北東にある淡河でも“里山体験型ツーリズム”を実施したり、自然の中に拠点を持って、暮らせるか試してみる機会を設けています」

コテージなら人と会うこともない

利用者のほとんどは神戸近郊の方ですが、2週間から長期滞在で仕事や創作活動を行う「ワーク・イン・レジデンス」というプランもあります。

この日の夕飯プレートは、神戸野菜をふんだんに使ったベジカレー。おまけにナシをいただいた

「お食事はご希望があればプレートを提供しています。食材は北野のファームスタンドで仕入れた地元の旬野菜で、長期滞在される方なら一緒に野菜を注文して自炊していただくのもいいと思います。山を拠点に、煮詰まったらハイキングをして、用事があれば市街地へ30分で下れて、六甲山の立地の良さを感じますね。わたし自身、ここで働き始めるまでアウトドアにはそれほど関心がないタイプでした。市街地での暮らしとのいちばんの違いは“音”ですね。とにかく静かで、夜更かしをしなくなりました。ここは眺望がいいのでカーテンをつけていないのですが、朝日で自然に目が覚めます。あと、鳥の声がすごい(笑)」

日が沈み、ROKKONOMADのテラスから大阪湾を見下ろしました。キラキラとした街の灯りが遠く、ああいう光の中で、せかせかと働いていた自分を思い、深呼吸をしたくなりました。

information ROKKONOMAD
住所:神戸市灘区六甲山町西谷山1878−48
TEL:078-891-0565
定休日:日曜日

アート作品を頼りに六甲山を巡った1日。神戸の歴史や自然にインスピレーションを受けた作品に触れ、日常と距離を置くことができました。山で暮らすなんて、考えてもみなかったことですが、六甲山で過ごしてみて、新しい可能性を創造した気がします。

「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」の開催は11月23日まで。わたしが訪れたのは夏の気配が残る9月でしたが、紅葉に包まれた作品は、どんな風に感じるのでしょうか。今回紹介できませんでしたが、夜にしか見られない作品もあり、秋の夜長にもう一度神戸を訪ねてみたいと思いました。


【文】コヤナギユウ
デザイナー/エディター
給食のオバサンから書籍出版社で営業職ののち、渋谷やNYの路上で絵を売るイラストレーターへ。現在はグラフィックデザイナーに転身し、旅や体験を楽しく情緒的に表現するライター業も行い、写真も撮る。カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務め、神社検定3級。
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