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2021.03.24

“日本感ゼロ?” 神戸北野で世界の教会・お寺巡り

“日本感ゼロ?” 神戸北野で世界の教会・お寺巡り

異文化のるつぼ・北野で「異国」を体感する”日本感ゼロ旅”へ

南北は中山手通りと北野通り、東西はフラワーロードと鯉川筋に囲まれた2k㎡ほどの『北野エリア』。1868年に神戸港が外国に対して門戸を開いて以来、明治〜大正にかけて外国人らが続々と住居を建築したことによって発展を遂げた地区です。その住居が、ガイドブックなどでいわゆる「異人館」と呼ばれているものですね。初期にはイギリス、ドイツ、アメリカなどからやって来た商人が多く住まいを構えましたが、その後インドやトルコ、ペルシャやユダヤの商人、華僑も移住。まさにそこは神戸の中の濃密なメルティングポット(異文化のるつぼ)となりました。

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人々の暮らしがそこにあることの現れの一つは、母国の料理が味わえるレストランや食料品店があったりすることはもちろん、祖国の文化を次世代に伝えるための学校、そして異国の地にあって、それぞれが信仰する神様に祈りを捧げる場所が不可欠でした。実際、現在も北野エリア周辺には各国料理の店、国際学校や幼稚園、洋の東西を越えた多彩な教会・寺院が東西2kmのエリアに集結しています。このエキゾチックな雰囲気満点の北野の街で、在住外国人の人々の暮らしを垣間みる”日本感ゼロ旅”を楽しんでみませんか。



File No.1:『神戸ムスリムモスク』空襲や震災にも耐えた日本最古のモスク

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1935年に日本初のモスクとして創建された歴史あるモスク。第二次大戦時の神戸大空襲や阪神淡路大震災にも耐えぬき、今もパールストリート沿いに2つのミナレット(尖塔)とドームがそびえています。こちらでは日の出から日没まで1日5回の礼拝(※1)が行われていますが、注目したいのは毎週金曜日のジュマーという集団礼拝の時間帯。この日は関西各地からムスリムの人々が家族や友人と訪れ、祈りを捧げます。実際、金曜12〜13時ごろのこの界隈は、パキスタン、アラブ、インドネシア、マレーシア、アフリカなど、世界各国のムスリムの人々でごった返していて、完全な異国モードに。

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モスク外部のアラベスク模様のレリーフもさることながら、内部も豪華なシャンデリア、ステンドグラスなどの美しい装飾が施されています。内部は誰でも見学が可能(※2)ですので、日本で本物のイスラム文化に触れてみるのはいかがでしょうか。

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近隣にはハラルフードの食材店やレストランもあるので、ぜひ立ち寄ってみて。

神戸ムスリムモスク
所在地:神戸市中央区中山手通2-25-14
開館時間:10:00〜18:00
Tel: 078-231-6060

※ 1:礼拝時間は日の出と日没の時間が基準となるので、季節によって変わります。詳細は下記HPで確認を。
※ 2:1〜3名の少人数のみOK。金曜日はジュマーが終了する13時30分以降のみ可。多人数になる場合は事前の予約が必要です。男性は1階、女性は2階のみ見学可。女性は髪をスカーフ等で覆い、肌の露出の少ない服装で。


Spot :『ナーン・イン』 “日本感ゼロ”を楽しむ金曜の「ハラール・ビュッフェ」

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このモスクに訪れるのは金曜日の正午がイチオシですが、礼拝の間、ムスリム以外は内部に入ることはできません。そこで見学ができるまでの間、モスク前のレストランで先に腹ごしらえを。「ナーン・イン」はパキスタン人オーナーが経営する、パキスタン料理店。毎週金曜のジュマーの日には、ムスリムのお客さん向けのハラール・ビュッフェが開催されます。チキン、マトン、ひよこ豆のカレー、サラダ、チキンビリヤニ、ナン、パゴラ、そしてお米のスイーツまで。これらすべてが食べ放題で1,250円(税別)!(2020年内特別価格。2021年〜は税別1,600円)

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席に着くとコーラのボトルがドン!と置かれ、これも飲み放題。ゴロゴロと骨付きのマトンやチキンが入ったカレーを、チキンビリヤニにかけて。辛すぎず、甘すぎず、コックリとまろやか、深い味わいで日本人の舌にもマッチ。何杯でもおかわりしたくなります。

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13時を過ぎると礼拝を終えたムスリムの人々が続々と来店。「アッサラームアレイクム!」(「神の平和を」の意味)というムスリムの挨拶があちこちから聞こえてきます。この時間帯、ほぼ日本人客はおらず…というかむしろ日本人が外国人。最初はちょっと緊張しますが、ムスリムの方々もやさしく席をゆずってくれたり、店員さんも日本語で対応してくれるのでご安心を。

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ナーン・イン
所在地:神戸市中央区山本通3-1-2
営業時間:11:00〜22:00
定休日:無休
Tel: 078-242-8771



File No.2:『バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院』 日本唯一のジャイナ教寺院

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みなさん、ジャイナ教ってご存知ですか?ジャイナ教は、西インドのグジャラート州を中心に広がる、厳格な菜食主義や不殺生で知られる宗教。神戸在住のインド人宝石商の多くはジャイナ教徒なのだそうです。一般にはインドの方といえばヒンドゥー教というイメージが強いのですが、実際は他にもいろいろな宗教の方がいるようです。
この寺院ができたのは1985年、神戸在住の教徒たちが出資して創建しました。寺社はインドから取り寄せた純白の総大理石造り。動植物を象った繊細な彫刻、きらびやかな金属の扉などがひときわエキゾチックです。こちらの寺院も内部の見学が可能(※)なので、日本で唯一のジャイナ教施設を体感してみましょう。

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白い階段を登った2階のホール前で靴を脱いだら、賽銭箱に寸志を入れてジャイナ哲学を解説した冊子をいただくことをおすすめします。生きとし生けるものの魂はすべて輪廻天性を繰り返しているから、どんな小さな虫さえ殺さず、菜食主義を貫く…という、マハトマ・ガンディーにも大きな影響を与えたその思想を学ぶことができます。

バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院
所在地:神戸市中央区北野町3-7-4
開館時間:日曜 12:00〜15:00
Tel: 078-241-5995

※ 寺院内での土足、喫煙、飲食、写真撮影は禁止。生理中の方は入場不可。
※コロナ期間中は安全のため信者以外の方の入館は不可。安全が確認でき次第、一般公開される予定です。外からの見学はOK。


Spot: 『インド俱楽部』 インド・コミュニティの中心地でお手頃ランチ

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1904年に「Oriental Club」としてこの地に創設され、1913年に「The India Club」と名称変更。100年以上の歴史を持つインド人コミュニティ施設です。通常は在神戸インド人の方々の冠婚葬祭や各種のインド文化発信イベント等に利用されていますが、毎週水曜日のみ、一般開放されて伝統的な北インド料理のランチが楽しめます。チキン、野菜、ほうれん草などのカレーやナンなどのボリュームたっぷりのセットが550〜1,000円(税別)とお手頃に登場!俱楽部内の異国な雰囲気とともに堪能できます。

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エントランスでは、インド独立の父、マハトマ・ガンディーの胸像がお出迎え。

Spot:『インド・プロビジョン・ストア』 これはもうスパイスの宝箱や!しかも超絶お手頃

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別名、「神戸のインド街」とも言われる北野エリアには、まだまだインドを体感出来るスポットが満載。ハンター坂沿いのビルの地階にある輸入食料品店「インド・プロビジョン・ストア」は、一歩店内に入ったとたんに脱日本感マックスの強力スポット。店内狭しと並ぶ棚には、スパイス、豆、小麦粉、紅茶、お菓子など膨大なインド産食材がズラリ。スパイス類は500g、1kgといった大袋から、20〜30g程度の小袋まであり、しかも驚くほどリーズナブル!おみやげにもぴったりです。

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インド・プロビジョン・ストア
所在地:神戸市中央区山本通2-12-21-BF
営業時間:10:00〜20:00
定休日:月曜
Tel: 078-221-0229



File No.3:『関西ユダヤ教会シナゴーグ』 杉原千畝「命のビザ」の舞台にもなった歴史ある会堂

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ジャイナ教寺院からさらに西へ進むと、シンプルな白い建物に六角形のダビデの星が目に入ります。ここは、関西唯一のユダヤ教シナゴーグ(会堂)。神戸の街にシナゴーグができたのは今から80年以上も前のこと。第二次世界大戦中には、ナチスドイツの迫害を逃れた多くのユダヤ人がリトアニアで杉原千畝により「命のビザ」を発給され、ロシア経由で舞鶴や神戸に到着。ここでひと時のやすらぎを得て祈りを捧げたそうです。その後、多くのユダヤ人は神戸港からアメリカなどに渡って行ったのですが、現在もこのシナゴーグはユダヤ人ラビ(司祭)が在籍する、関西在住ユダヤ人のコミュニティとして重要な役割りを果たしています。見学は要予約で少人数のみ可能ですが(※)、館内に入らずとも外観のダビデの星やヘブライ語のサインを垣間みて、日本とユダヤの歴史に思いを馳せるだけでも充分価値はあると思います。

関西ユダヤ教会シナゴーグ
所在地:神戸市中央区北野町4-12-12
Tel: 078-242-7254

※コロナ期間中は安全のため信者以外の方の入館は不可。安全が確認でき次第、一般にも要予約で公開される予定です。外からの見学はOK。



File No 4:『神戸ハリストス正教会』 チョコレートと青屋根の聖堂の不思議な縁

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インド俱楽部裏手の住宅街の路地にひっそりと佇むこちらの教会。こじんまりとした設えながらも青い屋根がとてもフォトジェニックな、日本正教会の聖堂です。正教会は東ヨーロッパを中心に広がったキリスト教の一派で、神戸には1873年頃に伝来。その後ロシア革命で日本に亡命したロシア人たちが、この地に心のよりどころを求めて教会を建設しました。ところが、第二次大戦の神戸空襲で教会は焼失。それにかわって1952年、神戸のチョコレートメーカー『コスモポリタン』を営むV.モロゾフ氏らの尽力によって現在の「生神女就寝聖堂」(聖母マリアの聖堂の意味)が建てられました。ちなみに、1926年に創業した『コスモポリタン』は、日本におけるバレンタインの元祖としてスイーツ史にその名を刻むブランド。神戸とチョコレート、そしてロシアという壮大な歴史のリンクを、この小さな青い屋根の聖堂が物語ってくれます。

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「ハリストス」はキリストのロシア語読み。横棒が2本多い八端十字架は正教会のシンボルです。

神戸ハリストス正教会
所在地:神戸市中央区山本通1-4-11
Tel: 078-221-4925

※ 月1回の日曜日と月2回の土曜日には10:00〜礼拝が行われていて、その際に内部を見学することも可能。詳細はHPなどで事前にチェックを。
※見学時は露出の多い服装は避けること。
※見学の際は聖堂維持のために小さな献金を。(マストではなくあくまでも志で)
※コロナ期間中は安全のため信者以外の方の入館は不可。安全が確認次第、一般にも公開される予定です。外からの見学はOK。



File No 5:『関帝廟』 三国志ゆかり”縁起物づくし”のお寺で財運をGET

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北野エリアをぐるっと一周したら、今度はパールストリート添いにゆっくり西へと散策。『関帝廟』は、有名な三国志の武将・関羽(関帝)を祀ったお寺で、華僑の人々の間では財運の神として厚く信仰されています。神戸の関帝廟は1888年の創建。第二次大戦で焼失するも1948年に再建。さらに阪神淡路大震災でのダメージを受けて1999年に復興されたものです。ここでは関帝の他にも一切の苦を取り除いてくれる『大慈大悲観世音菩薩』、航海・漁業の神『天后聖母』がいっしょに祀られています。開門時間内は自由に出入りができ、本堂で参拝も可能。写真映えも間違いなしのスポットなので、ぜひ立ち寄ってみましょう。

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本堂の内部は香港や台湾のお寺に行ったことがある方にはデジャヴュな風景。一気に時空を越えて現地にワープした気分になります。正面に関帝、聖観音像、天后聖母の像が飾られ、その前には丸い小さな座布団。そこに膝をついて祈りを捧げることができます。参拝の手順は館内に説明がありますので、それを見ながら見よう見まねで挑戦してみましょう。また、「この札でいいですか?」と、神様と対話しながら引く中国式のおみくじもありますので、財運をゲットして帰りましょう。

関帝廟
所在地:神戸市中央区中山手通7-3-2
開館時間:9:00〜17:00
Tel: 078-341-2872



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北野エリア2km四方の中には、他にも明治時代に外国人の社交場として開かれた「神戸俱楽部」や国際学校などもあり、立ち入ることはできなくても人々の日常を感じることができます。散策にはスニーカーでスタンバイして、荷物はホテルやロッカーに預けて、カメラだけ持ってゆったり半日、暮らすように旅しましょう。このリアの”日本らしからぬ”本当の魅力が見えてくるはずです。


【文・写真】
中山阿津子(編集者 / クリエイティブディレククター / フードスタディリサーチャー)
六甲山の麓で生まれる。中・高時代を王子公園、大学時代を岡本近辺で過ごし広告制作会社のコピーライターに。独立後、米国サンフランシスコでライターとして活動。帰国後、北野で編集・制作会社を運営。現在はフリー編集者、クリエイティブディレクターとして神戸をテーマとした観光情報誌・食情報誌・レシピブック・動画などの企画・編集を手掛ける。また近年は持続可能な食・文化・社会を研究するフードスタディリサーチャーとしても活動。
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