2025.05.02
- イベント
- 観光
花びらがつなぐ、人と街。北野坂に咲く『インフィオラータ』

神戸・北野坂。
異国情緒あふれる北野エリアへとつながるこの道には、毎年春になると「花びらの道」が現れます。
「インフィオラータこうべ」
多くの来場者で賑わうこのイベントは、色鮮やかな作品が彩る「神戸の春の風物詩」です。
今回は、多くの人々のつながりが生み出す「インフィオラータの本当の魅力」を探ります。
「インフィオラータこうべ」とは

「インフィオラータ(Infiorata)」とは、イタリア語で「花を敷きつめる」という意味。
道いっぱいに色とりどりの花びらで美しい絵や模様を描く伝統的なイベントで、本場イタリアでは宗教行事の一環として始まり、やがて街の人々の手によって地域の文化行事へと発展していきました。
神戸でインフィオラータが開催されるようになったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災がきっかけです。「傷ついた神戸を美しく彩りたい」との思いから、イタリア・ジェンツァーノのインフィオラータを参考にし、1997年、三宮東地区にて初めて開催されました。神戸・北野坂で初めて開催されたのは2001年。以来、多くの来場者を迎えるイベントとして開催されています。
27回目を迎える2025年も「インフィオラータこうべ」では、神戸・北野坂に150mに渡って作品が制作されます。
市民にも親しまれ、愛されているこのイベントにはどのような魅力があるのでしょうか。
今回は、「インフィオラータこうべ」に長く携わっておられる神戸北野美術館の館長・竹中愛美子さんにお話をうかがいました。

神戸北野美術館・館長 竹中 愛美子さん
「花の命を、最後まで美しく」
神戸北野美術館の館長として、北野の街とともにインフィオラータを見守ってきた竹中さん。
27回目を迎えるインフィオラータの発展をこう語ります。
「インフィオラータこうべで使われる花びらは、チューリップの球根を取るために切り落とされ、本来は廃棄されるはずだった大量の花びら。それらを再利用することから、環境にやさしいイベントとしても知られています。

さらに近年は、花絵に使用した花びらを染料として活用する取り組みや、会場に敷かれていた芝生を公園に再利用するなど、SDGsへ貢献する循環型イベントへと発展しています。」
花の命を最後まで美しく。そんな思いとともに継続されてきたインフィオラータは、さらなる発展をみせているのです。
地域をつなぐ「参加型のイベント」
「インフィオラータこうべ」の魅力の一つが「参加型のイベント」であるということ。多くの人々の手で作られるということが、作品をより一層魅力的にしているのです。
1枚の花絵を仕上げるのには約20人での作業が必要となり、毎年10枚ほどの作品が制作されることから、合計200人近くが作品制作に携わることになります。参加者は様々で、地元・神戸の方はもちろん、市外から訪れる観光客の方の姿も。
こうした多くの方が参加するからこそ生まれるインフィオラータの「本当の価値」を、竹中さんはこう話します。
「普段すれ違っても挨拶しなかった人同士が、花絵づくりを通じて言葉を交わすようになる。
このイベントの本当の価値は“作品の美しさ”だけではなく、“人と人がつながること”にあるんです。
花絵作成の為、ボランティアスタッフは朝9時すぎに集合し、早いチームは正午過ぎには完成。すべての作品が完成するは14時頃で、その後開会式が行われます。
北野の異国情緒あふれる景色とともに、山を望んで、坂道に連なる花絵、振り返れば港町の気配もある。そんな“神戸らしさ”を味わえるイベントです。」

「デジタルの時代だからこそ、“人の手で花を並べるコト”に意味がある」
お話の中で印象的だったのは、2013年のインフィオラータこうべで、兵庫県出身の少女漫画家さんとのコラボレーションをしたお話。
漫画作中には、神戸・北野地区をモチーフにした風景が登場することもあります。
作品を通じて北野の街並みに触れた読者が、実際にその地を訪れると、「あの場面の景色だ!」と親しみを覚えることも。漫画と現実が重なり合うことで、作品世界がより身近に感じられる魅力のひとつとなっています。
「神戸北野美術館で開催されていたイベントが縁で、漫画家さんとインフィオラータの花絵のコラボが始まりました。これをきっかけに、漫画家さんだけじゃなく、イラストレーターさんなど、いろんなジャンルのアーティストさんも、花絵づくりに参加してくれるようになりました。
インフィオラータの期間中に並行して、神戸北野美術館でも花絵のデザインを作ったアーティストさんの作品を公開していたりします。
インフィオラータの花絵は“人の想い”がぎゅっと詰まったアート、として進化し続けているのです。」

「今はAIやメタバースが進化しているデジタルな時代。でも、このインフィオラータは真逆で、人の手で花を並べるアナログな作業。だからこそ意味があると思っています。
一面に広がる花の香り、芝生を歩く足の感触、みんなで作り上げた達成感。それは、どんなテクノロジーでも再現できない“人のぬくもり”そのものです。」
インフィオラータの魅力をこう語る竹中さん。
人のつながりとぬくもりを感じるこのイベントへの思いを感じました。
インフィオラータこうべに合わせて、北野の街歩きもぜひ楽しんで
さて、インフィオラータと合わせて楽しみたいのが北野の町並み。
神戸らしい景色が楽しめる北野異人館街の散策も楽しんでほしいと竹中さんは話します。
「せっかく北野まで来たなら、インフィオラータを見に来てくれた方にはぜひ「北野異人館街」もゆっくり歩いてほしいですね。」

多くの異人館が立ち並ぶ北野エリア
北野は、明治時代に神戸港が開かれた頃、イギリスやドイツ、オランダなどから多くの貿易商人や商社関係者たちが多く暮らしていたエリア。
高台に建てられた洋館が今もそのまま残っていて、まるで異国を旅しているかのような、特別な時間が流れています。
インフィオラータを楽しんだ後、そのまま石畳の道を歩いていくと、歴史ある異人館やおしゃれなカフェ、レトロな雑貨屋さん、老舗の喫茶店などが点在しており、開港した当時の神戸の雰囲気を満喫できます。
ここからは北野を代表する異人館をいくつかご紹介しましょう。
ドイツ人貿易商の邸宅として建てられた「風見鶏の館(旧トーマス住宅)」

風見鶏の館(旧トーマス住宅)
※現在改修工事中の為、外観のみお楽しみいただけます(2025年夏頃リニューアルオープン予定)
美しい萌黄色の外観がひときわ目を引く、アメリカ総領事の住まいだった「萌黄の館」

萌黄の館
美しい装飾とドイツ風の気品が漂う「ラインの館(旧ドレウェル邸)」

ラインの館(旧ドレウェル邸)
一度見たら忘れることができない魚のうろこのような外壁が特徴的な「うろこの家」

うろこの家
四季の花に囲まれた前庭と木造建築が美しい「香りの家オランダ館」

香りの家オランダ館
調度品・絵画・彫刻の数々がぎっしり詰まった美邸「プラトン装飾美術館(イタリア館)」

プラトン装飾美術館(イタリア館)
花咲く坂道と異人館、北野の魅力
竹中さんは北野の魅力をこう語ります。
「市街地から10分ほど山側に歩くだけで離れていく喧騒、感じる自然、遠くを望めばきらめく海、ここ北野町エリアは神戸のすべてを体感できる場所だと感じています。」

「インフィオラータこうべは、花の美しさに加えて、人と街、過去と未来をつなぐ力を持つイベント。
その舞台となる北野は、異国情緒と歴史が息づく神戸らしさの詰まったエリアです。
ぜひ、春の神戸に訪れた際は、花とアートが織りなすインフィオラータを楽しみながら、北野の街歩きにも足を延ばし、神戸の魅力を全身で味わってみてください。」
神戸の春の風物詩「インフィオラータこうべ」。その魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。
主催 | インフィオラータこうべ「北野坂」実行委員会 |
---|---|
開催期間 | 2025年5月3日(土)~5月5日(月・祝) |
アクセス | 三ノ宮駅より徒歩9分 阪急三宮駅より徒歩8分 阪神三宮駅より徒歩10分 |
公式サイト | https://infiorata-kobe.net/ |