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COLUMN

2021.04.07

地元愛は日本一!な神戸っ子が教える“普段使いのお店”

地元愛は日本一!な神戸っ子が教える“普段使いのお店”

和洋中はもとより、世界各国の料理を楽しめるのは港町ならでは。おなじみの異人館街や南京町といったエリアでも、様々な国の食文化に触れることができます。観光客が訪れる店も数々ありますが、神戸の街なかには、日常に地元の人々が通う行きつけのお店も数多くあります。長年愛される老舗や、知る人ぞ知る名物メニューなど、神戸っ子に厚い支持を得る“定番の味”をご案内します。

シェフの技と誇りが詰まった、名物ぞろいの“街の洋食店”「グリル一平 新開地本店」

開港以来、外国航路の客船やホテル出身のシェフによって、神戸に根づいた洋食。当時は高級だった洋食を、親しみやすい“地元の味”として広めた、街場の洋食店の草分け的存在が「グリル一平」です。創業は1952年(昭和27年)。創業者の横山かんさんは、戦後、欧風化する日本を見越して、「これからは洋食や!」と、当時の神戸随一のハイカラな街・新開地に開店した先見の明の持ち主でした。ホテル出身のシェフがそれぞれの得意を生かして、腕を競うなかで生まれた名物の数々が今に受け継がれています。

そんな「グリル一平」の代名詞といえば、何といってもオムライス(850円・税込)。中が透けるほど薄く巻かれた玉子焼きに使う卵は、なんと約半個分。均一にパンっと張るほど破れにくく、巻き上げるまで1分という早業は、かつてはお客の目の前で見せていたとか。「うちでは、これがきれいに巻けて一人前」と、ムラのない美しい姿に、シェフの技と誇りが詰まっています。

オムライス。玉ネギペーストとケチャップを合わせたレッドーソース、毎日仕込むデミグラスソースとほくほくの玉子…三位一体の味わいは老若男女に人気

オムライスと並んで、オリジナルメニューとしてファンが多いのが、熱々鉄板で提供するマカロニイタリアン(1,400円・税込)です。ホワイトソースが定番のマカロニにレッドソース&デミグラスソースを合わせ、さらに生卵をトッピング。型破りの発想から生まれた、唯一無二の一品です。

マカロニイタリアン。トロリと絡むまろやかさは熱々の鉄板だからこそ。黄身を混ぜて味変させるのも楽しみの一つ

さらに、ハンバーグステーキ(1,800円・税込、サラダ、ライス付き)や海老クリームコロッケ(1,300円・税込)、豪華な天然有頭海老の海老フライ(2,200円・税込)まで、名物が目白押しですが、平日ランチタイム限定のお得なセットも見逃せません。ボリューム満点のミックスフライランチ(1,200円・税込)に、日替りのタイムランチ(900円・税込)の2種のセットは、いずれもライス、スープ付き。名店の味を気軽に味わえるとあって、昼時は毎日満員御礼の盛況ぶりです。

11:30~14:00のランチタイム限定のミックスフライランチ

現在、三宮・元町にも3つの支店を展開。手間を惜しまない仕事に加えて、時代に合わせてソースの味を微妙に調整するなど、絶えず進化を続ける姿勢が通いたくなる理由の一つ。お客に喜んでもらえる洋食をモットーに、気取らずご馳走を楽しめる、まさにお値打ちの一軒です。

RESTAURANT INFO

グリル一平 新開地本店

住所:神戸市兵庫区新開地2-5-5 リオ神戸2F
☎078-575-2073
営業時間:11:30~14:30(LO) 17:00~19:30(LO)
定休日:水・木曜

銅鍋でじっくり煮込んだ、特大サイズのおでんが自慢「高田屋京店」

新開地に暖簾を掲げて約90年。界隈でも随一の老舗居酒屋には、壁を埋め尽くすほど品書きの短冊がびっしり。お酒のアテから造り、焼物、揚げ物、ご飯ものまでそろう幅広さ。その中でも、1931年(昭和6年)の創業以来、変わらない看板メニューが、大きな銅鍋で湯気を立てるおでんです。

ズラリと並ぶ品書きを見ながら、注文を考えるのも楽しい

厚揚げやジャガイモは1個が丸ごと、焼き豆腐(300円・税込)なら半丁分と、いずれも存在感たっぷり。旨味あふれるすじ(220円・税込)や、特製の白味噌ダレで味わう大根(100円・税込)、ケチャップで洋風に仕上げたロールキャベツ(250円・税込)など、オリジナルの具材も自慢。 “げんこつサイズ”の具材の大きさ、注ぎ足す出汁まで、当時から守り続ける名代の味は、手抜きなしの丁寧な仕事の賜物です。

すじ、大根、ロールキャベツなど、名物のおでんはボリューム満点

おでんの醍醐味を余すところなく楽しむなら、ぜひおでんそば(150円・税込)を。具材の旨味が溶け込んだ出汁で楽しむ中華麺は、コクのあるちょっと甘めの味わいが後を引きます。おでんの具材もトッピングできるので、カスタムするのも楽しみの一つです。

おでんそばは、知る人ぞ知る一品。基本は麺とだしのみだが、おでんだけでなく、かき揚げや生卵などのトッピングも可

鯖の生ずし(400円・税込)や冬の名物カキフライ(500円・税込)など、お酒が進む多彩な一品に加えて、16:00まで注文できる定食(600円・税込)もお値打ち。おでん、いわし、魚フライ、鶏から、トンカツの5種類は、ご飯の大盛りもOKです。ランチから早めの昼酒、夕食時の晩酌まで、半日通してお客を迎えてくれる頼もしい存在。カウンター中心の気さくな雰囲気で、お一人様も気兼ねなく入れるのが嬉しい。

浅締めの軽やかな味わいが日本酒を呼ぶ鯖の生ずし

実は、10年ほど前に大黒柱の先代ご主人が亡くなり、一時は暖簾を下ろそうとした時期もありましたが、創業者の孫にあたる若き三代目が店を継承。二代目の女将と共に、先代そのままの手抜きなしの仕事ぶりで、名店の味を伝えています。カウンターの目の前でぐつぐつ煮えるおでんと共に、元気に働くお店の方の笑顔にも、元気をもらえる一軒です。

くねくねと折れ曲がるカウンターは、「お客さんの顔が端から端まで見えるように」という思いから
地下には広い畳敷きの座敷席も完備。個室としても使用できるので、子供連れでの食事にも重宝。座敷席は5~6人から予約も可 
RESTAURANT INFO

高田屋京店

住所:神戸市兵庫区湊町4-2-13
☎078-575-6654
営業時間:11:00~21:00(LO20:30) ※4/21まで。以降は要問合せ  定休日:日曜・祝日

滋味と愛情に満ちた中国版“おふくろの味”「杏杏(しんしん)」

洋食と共に、神戸に根づいたのが中国料理。南京町をはじめ、街なかにある数多くの中国料理店の中でも、地元の華僑の人々の間で本場の味として支持を得る一軒が「杏杏」。中国広東省出身の初代が1950年(昭和25年)に開店。創業から変わらない味を受け継ぐ、神戸が誇る老舗の一つです。

広東料理の一品や点心など、数あるメニューの中でも、ほとんどのお客のお目当ては中華粥。中国では朝食から夜食まで、毎日の食卓に上る家庭料理の定番で、日本の味噌汁のように、家ごとに味が違うそう。「杏杏」では、華僑二世の二代目・呉 杏芳(ウー・シンファン)さんが、幼いころから親しんだ祖父のレシピを継承しています。

中華粥は魚や牛肉など全6種。ランチタイムの中華粥(鶏)セット(1,100円・税込)には、やきそば、果物が付く

材料は、水で炊いた「お粥のタネ」と、老鶏の丸鶏からとるスープのみと至ってシンプル。それだけに、「少しでも手を抜くと、とろみがつかず水っぽくなりますから、ごまかしがきかないですね」と呉さん。焦がさないように、ひたすらかき混ぜながら煮込むこと3~4時間。まさに毎日の丁寧な仕事の賜物です。もったりと、とろみのあるお粥と、鶏の滋味が渾然と溶けあった濃密な旨味は、胃の腑を労わるようにじわりじわりと染みわたります。心も体も癒やされる優しい味わいは、まさに“おふくろの味”です。

また、カウンターに並ぶ自家製の点心も、この店の醍醐味の一つ。紹興酒を片手に、焼き豚や蒸し鶏、焼売など、手作りで仕込む本場の味を楽しむことができます。さらに、食後に外せないのが、オリジナルの卵まん。テイクアウトも可能なので手土産やおやつとしても人気の、知る人ぞ知る“神戸スイーツ”の逸品です。

カウンターに並ぶ自家製の点心
卵とバター、カスタードなどを根気よく練った特製の餡を包んだ、卵まん(1個165円・税込/持ち帰り162円・税込)、注文は2個〜
RESTAURANT INFO

杏杏

住所:神戸市中央区下山手通4-13-14
☎078-322-3339
営業時間:11:30~13:30、17:00~21:00
定休日:日曜、第3月曜休

ハイレベルの和・洋・中を1軒で堪能。神戸人が愛する”ハイパー日常店“「KOBE 味加味」

オーナーの垣谷定道さん。近隣の料理人もよく食事に訪れ、リスペクトされる存在
オープンエア×オープンキッチンの活気あふれる店内。客層はサラリーマン、自営業者、ファミリーと、老若男女さまざま

三宮駅から、北野坂を山手へ。中山手通の大きな交差点を超えてすぐの路地裏にある『KOBE味加味』(みかみ)。一見、おしゃれなオープンエアカフェのようにも見えるこの店が、なぜ神戸っ子の胃袋をつかんで放さないのでしょうか。

今年の秋に誕生30年を迎える『味加味』は、商社勤務のサラリーマンだった垣谷定道さんが、以前から興味を抱いていた飲食店経営に乗り出すべく開業した「うどん屋」さん。当時、場所はここから路地をさらに奥に入り、新神戸近くまで進んだ先にあったため、知る人ぞ知る隠れ家店といわれていました。現在の場所には2019年(令和元年)に移転し、アクセスが良くなったこともあり、ますます人気を博しています。

近頃の人気メニュー「チーズ焼きチキンカツデミソース」(1,100円・ランチ時税込)。濃厚なチーズ感と自家製デミの濃厚さに大満足の一皿 ※ディナー時は税別価格

ランチタイムが始まる11:30を過ぎるあたりから、近隣のサラリーマンが一斉に男女問わず押し寄せます。あっという間に店内は満席に。続く13:00〜15:00は、少し緩やかな流れになり、今度はショップ店員や地元企業の経営者など、時間に自由がきく人々が訪れます。

この長いランチタイムと、そこで提供される料理が、この店の第1の魅力。もちろん、人々が集まる最大の理由はその料理です。メニューを見れば、驚くほどの料理数。しかも、そのほとんどが定食スタイル。働く人にとって嬉しいグッド・バランスなメニュー構成であり、また多彩なメニューの中から選べることも魅力です。

また料理が登場して驚くのは、そのボリューム! ご飯とうどんが両方ついてくる! そしてこの価格!う どんとご飯の組み合わせは、関西圏以外ではあまり馴染みのないスタイルだと聞きますが、地元ワーカーたちにとっては大切なエネルギー源なのです。

ランチメニューだけでもこの膨大なラインナップ。定食は夜も食べられるため、毎日のように夕食を食べにくるサラリーマンも多数

さらに、メニューを見ていて気づくのが、和食・洋食・中華といったバラエティーの豊富さ。味わいはもちろん、どれも本格的です。その理由は、厨房の中に、和・洋・中それぞれ専門のシェフが3人揃っていること。だから、どのジャンルの料理においてもぬかりはありません。その徹底ぶり、そして味のクオリティの高さこそが、長年、地元で愛されている秘密なのです。

「カニレタスチャーハン」(900円・ランチ時税込/スープ、サラダ付き)チャーハンをつき崩すと、圧倒的な量の蟹身があふれ出す ※ディナー時は税別価格

そして、『味加味』のハイライトはなんといっても夜。夜になると、テーブルでスライスされるイベリコ生ハム、巨大パルミジャーノのボウルの中で和える濃厚パスタ。新鮮な瀬戸内の魚介の刺身に、ワタリガニが丸ごと1匹入った濃厚アメリケーヌソースパスタ、ミル貝の温菜etc。

季節限定の料理も多いですが、まるで3件のレストランから取り寄せたようなクオリティの高い料理が1つの店で味わえます。もちろん、料理と楽しむ豊富なワインから、食後の自家製スイーツまで、昼と同様、コスパの高さも申し分ありません。

昼も、夜も、口の肥えた神戸っ子を30年も満足させてきたこの店をして、「一体、何屋さんなの?」と聞く人も多いですが、その答えはシンプルに「地元人がこよなく愛するハイパーな日常の店」と言う以外はないでしょう。

「鯛のあら炊き定食」1,000円(ランチ時税込)。大きな鯛の頭半身が丸ごと登場。一緒に炊いたゴロゴロ野菜も味が染みて美味。1日2食のみ ※ディナー時は税別価格
RESTAURANT INFO

KOBE 味加味

住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-22
☎078-242-5200
営業時間:11:30~15:00、17:00~22:00(L.O.21:40)
定休日:火曜

長年、支持を得てきた地元の人気店には、和洋中それぞれに名物メニューが、日常のごちそうとして変わらない味を伝えています。今回ご紹介したお店は、そのほんの一部。にぎわう観光地から少し外れて歩いてみれば、神戸っ子が愛してやまない、とっておきの一軒に出合えます。



【文・写真】田中慶一

神戸の編集プロダクションを経て、フリーランスの編集・文筆・校正業。関西の食を中心に情報誌などの企画・編集を手掛ける。また、学生時代からのコーヒー好きが高じて、2001年から珈琲と喫茶にまつわる小冊子『甘苦一滴』を独自に発行するなど専門分野を開拓。全国各地で訪れた店は約1000軒超。13年より、神戸市の街歩きツアー「おとな旅・神戸」でも案内人を務め、17年には、『神戸とコーヒー 港からはじまる物語』(神戸新聞総合出版センター)の制作を全面担当。


【文】中山阿津子(編集者 / クリエイティブディレククター / フードスタディリサーチャー)

六甲山の麓で生まれる。中・高時代を王子公園、大学時代を岡本近辺で過ごし広告制作会社のコピーライターに。独立後、米国サンフランシスコでライターとして活動。帰国後、北野で編集・制作会社を運営。現在はフリー編集者、クリエイティブディレクターとして神戸をテーマとした観光情報誌・食情報誌・レシピブック・動画などの企画・編集を手掛ける。また近年は持続可能な食・文化・社会を研究するフードスタディリサーチャーとしても活動。

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