COLUMN

2021.03.26

まちを耕そう!FARM to FORK 2020 vol.2 [アーバンファーミング]

まちを耕そう!FARM to FORK 2020 vol.2 [アーバンファーミング]

2020年秋に開催された、”農地と街の心の距離”を近づけるためのお祭り『FARM to FORK 2020』
今回は開催テーマの「まちを耕そう」の背景にあるアーバンファーミングにスポットを当てて、神戸のリアルな暮らしの中で起こりつつある変化をお伝えします。

CONTENTS
  1. なぜいま「アーバンファーミング」なのか
  2. 神戸のアーバンファーミング
  3. FARM to FORKを支える人・想い
  4. 神戸のアーバンファーミングの未来

なぜいま「アーバンファーミング」なのか

アーバンファーミングとは、簡単に言えば街で野菜や植物を育てること。農家さんと話したり直接野菜を買ったりするだけでも、台風や日照りのニュースを聞くと農家さんのことを思い出したり、スーパーの野菜売り場で産地や栽培方法が気になったりと、日々の暮らしに変化は起こります。しかし、それ以上に「都市と農地の心の距離」を近づけるためには、農家さんと同じことをしてみるのが一番です。

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FARM to FORK 2020のオブジェ 写真 / 森山雅智

例えばプランターひとつで、野菜を育ててみる。そうすることで、野菜が育つまでにかかる時間や、収穫までの手入れの苦労など、一歩踏み込んで農家さんや農業そのものについて知ることができるからです。

こういった心の変化に加えて、アーバンファーミングは暮らしを物理的に変える力を秘めているのではないでしょうか。例えば、自然が少ない都市で暮らす子供たちの食育の「教室」や、食糧を供給する「農場」、さらには人々が交流する「公園」のような役割も。また、社会問題化しつつある「空き地」を有効活用でき、防災・防犯にも繋がります。

実際に、アーバンファーミングが盛んなアメリカやヨーロッパでは、地域コミュニティーや貧困の課題を解決したり、若者が新しいビジネスを始めたりと、先進的な取り組みが生まれています。

【FARM to FORK 2020開催にあわせて公開された世界各地のアーバンファーマーへのインタビュー動画】

ロサンゼルスのギャングスタ・ガーデナー、ロン・フィンリーさんに聞く「まちを耕す」とは?
街中の野菜が取り放題。<イギリス>トッドモーデンの活動家に聞く「まちを耕す」とは?
世界最大の屋上菜園 AGRIPOLIS。<フランス>パリの起業家に聞く「まちを耕す」とは?

このように、暮らしに様々な変化をもたらす可能性のあるアーバンファーミングですが、FARM to FORK 2020では特に食育面での効果に期待してテーマに取り上げられました。街の子どもたちが野菜栽培に興味を持つ機会が増えると、農家に憧れる子どもが増えるかもしれません。

また、私たち大人も含めて、食べ物が生まれる仕組みや、野菜の生命力、先人たちの知恵、協力し合うことの大切さなど、社会生活を送るうえで欠かせないことを実感する機会にもなるはずです。

FARM to FORK 2020のテーマ「まちを耕す」という言葉には、街を畑にして耕すという意味に加えて、街で暮らす人の意識も耕していく。そんな想いが託されていました。

神戸のアーバンファーミング

実際に神戸では様々なカタチでアーバンファーミングに取り組む人たちがいます。例えば、中華街の南京町があることで有名な元町から、山側に15分ほど歩いたところにあるマンションの屋上。

ここでは、屋上に大きなプランターを設置し、地域の人が有料で使える貸し農園兼イベントスペースとしての活用が始まっています。

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この場所をプロデュースしたのは設計士の高橋渓さんと貿易商の原田真二さん。ふたりでSky Cultivationという屋上菜園プロジェクトを立ち上げ、この場所以外にも、さまざまなビルの屋上を菜園化する活動に取り組んでいます。

このマンションの屋上菜園には、一辺が1mのプランターが合計15個あり、その一つを2〜3名でシェア。2020年秋にスタートし、冬には早速最初の野菜が収穫されました。ゆくゆくは、収穫祭などのイベントを開催できればと計画中とのこと。

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もうひとつは、異人館で有名な北野エリアの住宅街の一角にある空き地を活用したアーバンファーミング。ここでは、神戸市北区で農業を営む森本聖子さんが、街のシェフたちに野菜の栽培方法を教える農業教室が開催されています。

実は、森本さんとシェフたちはもともと野菜の取引先同士。自分で育てた野菜を料理に使いたい、野菜への見識を深めたい、という思いを持つシェフが増えてきたことで、この農業教室は始まりました。

もともとこの場所は2015年から菜園として活用されていて、森本さんの農業教室は2019年4月からスタート。ゆくゆくはシェフたちがお店用の畑を持つことが目標です。森本さんは農家以外の人が野菜を育てることについて肯定的で、「野菜の供給量はまだまだ十分ではありません。アーバンファーミングによってより多くの人に野菜を食べてもらえるのはうれしい。農業のことを知ってもらえる機会が増えるのもいいこと」と言います。

このふたつのアーバンファーミングに共通するのは、屋上菜園・農業教室で新しいコミュニティーが生まれ、育まれていること。そこで交わされる何気ない会話、ちょっとした助け合いによって生まれた仲間意識や信頼は、畑の外でも変わらないのです。

FARM to FORKを支える人・想い

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FARM to FORK 2020の様子 写真 / 森山雅智

FARM to FORKは2015年から毎年、神戸市街地の中心部・三ノ宮にある緑の多い公園「東遊園地」で開催されてきました。きっかけは、神戸の農漁業の豊かさを多くの人に知ってもらいたいという、神戸市と、農漁業関係者・市民たちの想い。(詳しくはvol.1へ

その想いを束ねる役割を務め、FARM to FORKの開催を支え続けているのが小泉寛明さん・亜由美さん夫婦です。

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小泉寛明さん、亜由美さんご夫婦 写真 / 森山雅智
PROFILE

小泉寛明さん、亜由美さん

不動産仲介とエリアディベロップメントを行う『神戸R不動産』の運営や、東遊園地でほぼ毎週土曜日に開催している『EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET』の運営理事の一員、そして北野にある複合施設『KITANOMAD』とその1Fにある地産地消のグロサリーショップ『FARMSTAND』を運営するパワフルなご夫婦。

ふたりがFARM to FORKに込める願いは「都市と農地の心の距離を近づけたい」。今では「地産地消」という言葉が日々の暮らしに浸透し、買える物や手に入れる方法も増えてきましたが、FARM to FORKが始まった頃は神戸市街地で地産の野菜を手に入れられる場所はとても限られていました。

そのうちのひとつが、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETです。小泉夫婦は、ファーマーズマーケットが始まった当時から「かつては当たり前だった地産地消をもう一度暮らしに根付かせるためには、街での暮らしに『農漁業』との関わりを取り戻していく必要がある」と考えていました。

このマーケットはすぐに、農家さんや地産の物を手に入れたい街の人にとって無くてはならない存在になりましたが、「より多くの人に地産地消の大切さを伝える機会が必要だ」と考えるようになったとふたりは言います。

「打ち上げ花火的にならないように、地道に長く続けることが大事」。ふたりが口ぐせのようによく使うこの言葉を、ほぼ毎週土曜日に開催されるファーマーズマーケットはまさに体現しているのです。

神戸のアーバンファーミングの未来

さまざまなスタイルでアーバンファーミングの芽が育ちつつある神戸。住宅街の一角や、都市の屋上が畑として活用されている街並み。野菜という共通言語で、世代や職種を越えてつながるコミュニティー。これらが当たり前になっている未来を想像するとワクワクしてきます。

最後に、2015年より神戸の街と農地をつなげる取り組みを行ってきた一般社団法人KOBE FARMERS MARKETのメンバーが、ファーマーズマーケットをスタートさせるにあたり制作したコンセプトブックからの一文を紹介します。

今のこどもが大人になった2040年頃の神戸は、どうなっているのでしょうか?
私たちはこんなことを思い描いています。

ファーマーズマーケットが町のあちこちで開催されており、新鮮な地元の野菜が常に手に入り、農家から直接買った野菜が日々食卓に並んでいる。
日頃からやりとりする親しい農家や漁師がいて、時には農地や漁場に訪れることがある。
レストランや学校では、神戸産の食材が当たり前のように使われていて、地元産のフレッシュで美味しい野菜が楽しめる。
町のあちこちで屋上ダイニングや畑の移動レストランなどが展開され、屋外で食を楽しむことが定着している。
住宅街には必ず共同の菜園があり、バルコニーや屋上で家庭菜園をすることなども普及し、農が暮らしの一部になっている。
農業や漁業などの第一次産業に携わる人、食で起業する人が増え、様々な食のビジネスが生まれ、地域の次代を支えている。
食育が私たちの生活やこどもたちの教育に根付き、世代から世代へ食の大切さが継承されている。

十分実現可能な未来。みんなで一緒につくりませんか。

引用元:EAT LOCAL KOBE コンセプトブックより

みなさんも、自分に合ったアーバンファーミングを始めてみませんか?まずはベランダ菜園からでも。

【文】則直建都

兵庫県宝塚市出身、神戸市在住。阪神間で過不足なく暮らすローカル体質人間。サイクリングとロードレース観戦が好き。

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