地産地消を通じて農地と街の"心の距離"を近づけるためのお祭り『FARM to FORK』が、10月30日から11月1日までの3日間、東遊園地の芝生広場で開催されました。(主催:神戸市、食都神戸運営共同事業体 共催:一般社団法人KOBE FARMERS MARKET)
今年のテーマは、都市の中心で農業を行うことを意味する「URBAN FARMING(アーバンファーミング) / まちを耕そう!」。会場ではテーマにあわせたトーク&ライブが催されました。
また、東遊園地でほぼ毎週土曜に開催されている「ファーマーズマーケット」も併催され、神戸の農家や飲食事業など約30店が出店。訪れた人たちはファーマーズマーケットで買った料理やドリンクを楽しみながら神戸の未来像に思いを巡らせていました。
2日間+前夜祭で行われたトーク&ライブをはじめとした催しや、会場の様子をご紹介します。
デジタル機器とネット回線さえあればどこでも仕事をできる若者たちが、自然豊かな地方へ移住する動きが目立ち始めた昨今。神戸には、山と水の恩恵を受けられる豊かな地域「山水郷」としての側面があり、ほどよく少ない人口はwithコロナの時代においては「魅力」にもなる。
暮らしが職住近接に向かうなかで、農村部で暮らしながら都市部で仕事をするような「新しい働き方」を行政が支援していく。これからの時代をつくる35歳以下の若い人たちから学ぶ姿勢も大事だ。といったお話が展開されました。
今年のテーマ「アーバンファーミング」について、実際に神戸のまちなかで実践しはじめているゲストの3人それぞれの取り組みとアーバンファーミングの考え方についてお話しがありました。住宅街の一角で料理人たちに畑作業を教える農家、住宅街にある自然を取り入れて暮らす人、屋上の菜園化に取り組む建築家の三者三様のアーバンファーミングがあり、その多様性を感じられたひとときでした。
アーバンファーミングでは野菜を育てることのほかにも、畑作業から近隣住民とのコミュニケーションが生まれたり、空き地・空き家を有効活用できたりと、社会課題の解決方法のひとつとしても注目されているそうです。また、敷地内や屋上で野菜を育て、その野菜を使って料理を提供するレストランが増えると、流通コストの削減にもなるとか。お話を聴いて、「自分もベランダからアーバンファーミングをはじめてみようかな?」と思った人も、少なくなかったのではないでしょうか。
1970年代の有機農業創生期から有機農業の普及に尽力されていた保田茂先生は、稲藁と竹で作られたFARM to FORKのメインオブジェを目にして急遽話題を変更。地球温暖化対策として炭酸ガスを新たに生み出さないことも大事だが、今ある炭酸ガスを減らすことも大事で、もっとも有効な手段は「米作り」だという話題からはじまりました。
炭酸ガスをため込み酸素を吐き出しながら育ち、お米を実らせる稲。三食のうちご飯を食べる回数を増やすこと、そして脱穀したあとの稲藁を燃やさずに畳や茅葺として利用する、昔ながらの暮らしを少しずつ取り戻していくことの大切さを学びました。
学校の中にガーデンを作り、そこで育てた野菜を収穫して食べる(エディブルスクールヤード)。そんな取り組みを東京都多摩市立愛和小学校とともにはじめ、横浜・倉敷・沖縄の学校とも進めはじめているEdible Schoolyard Japanの冨田栄里さんと、エディブルスクールヤードのアフタースクールを4月から始める辻かおりさんの対談では、新しい食育の形を知ることができました。
エディブルスクールヤードを通して、教室での授業だと活躍できなかった生徒の新しい活躍の場(校内の畑)が生まれることで、生徒はもちろんその保護者や担任教員が、試験でいい点をとることの他にある教育の大切さを感じはじめるようになるそうです。話を聴いていた来場者のなかには、神戸の学校でも実現して欲しいと感じた人も多かったのではないでしょうか。
共生革命家としてパーマカルチャー(自然環境を参考に持続可能な暮らしを実現させるための考えやデザインの総称)を普及させるために、出版物の監修や国内外でのワークショップを開催しているソーヤー海さん。
その話の冒頭でまず驚いたのが、「僕たち人間だけが、お金を介して食糧を得たり、地球のエネルギーの恩恵を受けたりしている。動物たちはみんなタダで手に入れているのに!」という発言。私たちの暮らす社会の前提条件に一度首をかしげてみることが、パーマカルチャーの入り口だということを教えてくれました。
神戸の農漁業をクリエイターと学生の新しい視点で切り取る「にさんがろくプロジェクト」の中間報告会では、来年2月の発表会に向けたプロジェクトの進捗状況報告が行われました。
「神戸産イチジクの活用と認知度向上」「神戸産水産物の活用と認知度向上」「ウィズコロナ時代における神戸の農漁業のあり方」「農業を学ぶ場づくり」といったテーマで、デザイナー・建築家・経営者・プロジェクトマネージャーと学生たちによる4チームが農漁業の生産現場で見て感じたことから、今年はどんなアイデアが生まれ実現するのでしょうか?
FARM to FORKの象徴ともいえる茅葺と竹のオブジェを毎年デザインしている茅葺職人集団「くさかんむり」(神戸市北区)が、1日目と2日目に茅葺ワークショップを開催しました。茅葺を知らない子たちはもちろん大人にとっても、茅を束ねて小さなオブジェを作る体験はとても新鮮で、体験者の絶えない人気ぶりでした。
FARM to FORK 2020では前夜祭と1日目の夜に、屋外上映会が開催されました。
前夜祭で上映されたイギリス・アメリカで行われているアーバンファーミングのドキュメンタリー映画「街を食べる」「ブルックリンの屋上菜園」と、神戸でアーバンファーミングをはじめている人たちにフォーカスを当てたFARM to FORK 2020のオリジナルドキュメンタリー映画では、アーバンファーミングの拡大に成功しつつある海外の事例を知ることで、神戸でのアーバンファーミングの可能性について思いを巡らせる時間を共有しました。
1日目の夜には「いただきます2 ここは、発酵の楽園」が上映され、「食べるものが私たちになる」という考え方や、私たちがいかにして菌たちとともに共存しているのかを学ぶことができました。
神戸では年間を通してさまざまなイベントが催されていますが、そのなかでもFARM to FORKは、神戸の農漁業の「いま」と「未来」を感じられるイベントとして成長を続け、年々その規模も内容も充実してきています。
ぜひ次回開催の際は神戸への観光をかねて、みなさん自身の肌で神戸の都市と農村の空気、そして神戸の農漁業の「いま」と「未来」を体感しに来てください。
vol.2では、FARM to FORK の開催背景や、なぜ今「アーバンファーミング」なのか、今まさに神戸で始まりつつあるアーバンファーミングについて、そして関係者が思い描く神戸の未来についてご紹介します。お楽しみに。
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