2021.03.26
- グルメ
神戸のパティスリー自慢の「ガレット・デ・ロワ」で新年をお祝いしませんか?
ヨーロッパでは、イエス・キリストが誕生する12月25日の1ケ月前からアドべントといって、クリスマスの準備がはじまります。前回ご紹介したシュトレンを準備するところからはじまり、25日にクリスマスを迎え、お祝いがはじまり、そのお祝いは2週間続きます。
そして新年を迎え、1月6日にようやくイエス・キリストの生誕を公にします。この日をエピファニー(公現節)と呼び、お祝いに食べるのが「ガレット・デ・ロワ」。「王様のお菓子」という意味を持つお菓子を、家族や友人と一緒に楽しむ風習が伝え続けられています。
そんな伝統的なお菓子「ガレット・デ・ロワ」について、神戸市中央区海岸通にお店を構える「パティスリーモンプリュ」の林周平シェフに伺いました。
- 【インタビュー】林周平シェフ/パティスリーモンプリュ
- パティスリーモンプリュ
- ビゴの店国際会館店
- patisserie AKITO(パティスリーアキト)
- Patisserie Agricole(パティスリーアグリコール)
【インタビュー】林周平シェフ/パティスリーモンプリュ
――林シェフのガレット・デ・ロワの思い出を教えてください。
林シェフ:やっぱりフランスでの修行時代でしょうか。たくさん作りました。「ガレット・デ・ロワ」は、日本で言うところのおせち料理のような、季節の節目に食べるものなんです。フランスでは、1月6日から、だいたい1月いっぱいは、パティスリー、ブランジュリーともにガレット・デ・ロワが並んでいましたね。
フランスではパティスリーでも、ブランジュリーでも、ガレット・デ・ロワは割と雑に並べられていました。特にブランジュリーでは、重ねられていたり、縦に並んでいたり…。修業先でも、スタッフみんなで食べましたよ!
――お菓子の特徴は?
林シェフ:シンプルなお菓子なんです。パイ生地とアーモンドクリームだけですから。パイの折り方、焼き方、アーモンドクリームの味や分量で、それぞれのお店の味を作る感じですね。うちのガレット・デ・ロワもトラディショナルです。ラムを風味づけに効かせています。
スタンダードな製法を踏まえて、アレンジした「ガレット・デ・ロワ」も近年では人気があります。例えば、元町の「パティスリーアキト」では、自慢のミルクジャムを使ったガレット・デ・ロワを、垂水の「パティスリーアグリコール」では、お得意の野菜を使ったガレット・デ・ロワを作られています。食べ比べても楽しいですね。
――表面にある模様(クープ)には意味がありますか?
林シェフ:月桂樹や太陽、麦の穂をモチーフにした模様がトラディショナルです。どれも、子孫繁栄や五穀豊穣などの願いが込められています。
――ガレット・デ・ロワには、食べ方があるのですよね?
林シェフ:はい。もうご存知の方も多いと思うのですが、「ガレット・デ・ロワ」はフランス語で、「王様のお菓子」という意味があります。ガレット・デ・ロワを購入すると紙製の王冠が付いてきます。
ガレット・デ・ロワを切り分け、家族や友人、仲間と食べて、1月6日を楽しく過ごすのですが、切り分けられたガレットの中に「フェーブ」という小さな陶製のおもちゃが入っていたら「あたり!」。おまけの王冠を頭にのせて、みんなから祝福のキスを受けることができるのです。
当たった人は、その年1年をハッピーに過ごすことができるといわれ、新年の運試しを楽しむようなゲーム性もあるお菓子なんですよ。
――楽しそうですね。
林シェフ:フランスのパン職人、フィリップ・ビゴさんに生前お会いし、お話を伺ったことがあります。フランスでは、テーブルクロスをかぶせたダイニングテーブルの下に子供が隠れ、大人たちが均等にカットしたガレット・デ・ロワをくるくる回転させて、「ストップ」と言ったら止め、「このピースは誰に食べてもらう?」とテーブル下の子供に問いかけるそうです。
そして子供が「それはパパ」と答えるというふうに、見えないところで誰がどれを食べるかを決めて、フェーブが入っているかどうかドキドキしながら食べて楽しんでいたそうです。
私は、そういう楽しみ方はしたことがないのですが、ビゴさんならではのライブ感溢れるお話に感動したのを覚えています。
――フェーブっていうのはどんなもの?
林シェフ:フェーブというのは、フランス語で「豆」という意味。豆のように小さな陶製のおもちゃのことをフェーブと呼んでいます。このフェーブを専門に作るお店もあって、コレクションする人もいます。私も、新旧織り交ぜて、結構たくさん持っています。お店によってはオリジナルのフェーブを作っているところもありますね。
――林シェフもフェーブコレクターと伺いました。
林シェフ:マニアックに集めているわけではないのですが…(笑)。自然と集まってきました。気に入ったデザインのものは購入し、実際に食べて当たったものもありますよ。
――「ガレット・デ・ロワ」があれば、家族や友人が集まって楽しいひとときを過ごせそうですね。
林シェフ:神戸には、パティスリーもブランジュリーも結構ガレット・デ・ロワを焼いているお店が多いと感じています。誰もが家で過ごす時間が増えていると思います。こんなご時世だからこそ、「ガレット・デ・ロワ」のようなお菓子で、家族や友人とおいしく楽しい時間を過ごせるといいですね。
パティスリーモンプリュ
神戸を代表するパティスリー。オープン当初から作っている「ガレット・デ・ロワ」は、アーモンドクリームにイタリア・シシリー産のギルジェンティ種のアーモンドを使用。贅沢な素材を使用した、リッチな味わいがさすが。またクープの美しさが際立つ、深い焼き色がフォトジェニック。3つ折り6回の パイ生地の層が軽く香ばしく、贅沢クリームに合う!
パティスリーモンプリュ
住所:神戸市中央区海岸通3-1-17
☎:078-321-1048
営業時間:10:00~18:00
定休日:火曜(1月6・7日休み)
ビゴの店国際会館店
芦屋本店をはじめ、阪神間にパティスリー、レストラン、サンドイッチ専門店など、11店舗を展開する「ビゴの店」。神戸市内でももちろん人気の名店です。日本におけるフランスパンの草分け的存在であるフィリップ・ビゴさんは、パンのおいしさとともに、フランスのパン、お菓子の文化も伝えてくれる方でした。「ガレット・デ・ロワ」ももちろんそんなお菓子の一つ。こちらのガレット・デ・ロワは、パイ生地を型で抜かずに丸く伸ばすところやアーモンドクリームにカスタードクリームを混ぜているところなどがこだわりポイント。サクサクの歯ごたえやクリームのなめらかさは、幅広い客層に親しまれています。
ビゴの店国際会館店
住所:神戸市中央区御幸通8-1-6 神戸国際会館B2F
☎:078-230-3367
営業時間・定休日:神戸国際会館に準ずる
patisserie AKITO(パティスリーアキト)
バリエーション豊富なミルクジャムやフランス菓子を展開するパティスリー。「ガレット・デ・ロワ」は、田中哲人シェフ自慢のミルクジャムをアーモンドクリームの中にブレンド。バターで生地を包んでいく製法・アンヴェルセで作るパイに、ミルクジャムを伸ばした皮付きアーモンドクリームが贅沢な一品です。
patisserie AKITO
住所:神戸市中央区元町通3-17-6
☎:078-332-3620
営業時間:10:30~18:30(カフェ~18:00LO)
定休日:火曜日(祝日の場合、翌日水曜)
Patisserie Agricole(パティスリーアグリコール)
神戸、東京の名店で研鑽を積んだ奥田義勝シェフが切り盛り。クラッシックなフランス菓子と合わせて、トマト、タマネギなど地元野菜を使ったお菓子にも定評あり。「ガレット・デ・ロワ」は、淡路産のタマネギを炒めてイタリア・シチリア産のアーモンドプードルを使ったアーモンドクリームに合わせた変わり種。甘みの中に、ほんのりタマネギの味が楽しい!
Patisserie Agricole
住所:神戸市垂水区霞ヶ丘5-1-26
☎:078-754-9055
営業時間:10:00~19:00
定休日:火曜・臨時休業あり 1月6,7,8日休み
2021年はいいことあるといいな…。そんな願いも込めながら、みんなで「ガレット・デ・ロワ」を食べませんか?
赤穂生まれ、神戸暮らし。お菓子、パン、雑貨などを中心に雑誌、ガイドブック、ウェブなどで取材執筆。著書に「東京最高のパティスリー」(ぴあ刊)、編集から携わったムック「神戸のおいしいパン屋さん」、「神戸紅茶さんぽ」、「神戸土産の新定番」(共にグラフィス社)など。パンやお菓子の取材活動やスイーツ&パンイベント「miho à la mode」の主催のほか、イベントのディレクションも手がける。